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最後の恋に花束を
第6章 大学一年の冬

彼の瞳が私を捕らえる。
彼の表情はいつもと違って真剣だ。
「 な… なに 」
『 … 可奈 』
その声と共に、彼の顔が近付く。
思わず息を殺して、顔を横に向けた。
『 … 可奈 』
優しく名前を呼ぶ彼。彼から顔を逸らすが私の視界に現れると、彼は私に顔を寄せる。
ナニが起きるかは、分かっていた …
チュッ と小さリップ音が響き渡る。
彼は私の唇へと、優しくキスを落とした。
高鳴った心臓と共に、身体が熱を帯びていく。
離れた唇を、愛おしそうに見つめる彼の瞼がチラリと視界に入った。彼の吐息が、僅かに感じられる。
「 … だめ。」
小さく息を飲んだ私は、言葉を吐く。
すぐそばには、私を見つめる彼の顔があった。
『 … ダメ?』
その言葉と同時に彼の身体は私に跨るように、覆い被さる。彼のしっかりとした身体が…脚が。私の身体に触れる。
彼はお菓子をねだるような表情をしながら、私を見つめる。
『 … ねぇ、ダメ?』
再び彼が口を開くと、顔を寄せた。
そして私の返事を聞かぬままに、彼は自分の唇をグッと私の唇へ重ねた。
「 … んっ 」
思わず瞼を閉じる。
重なった唇の隙間から、ふっと吐息が漏れた。
チュッ… チュ とリップ音を立てながら、彼は唇を幾度となく重ねる。
「 … っ だ、 めっ 」
彼の身体を離そうと腕を動かすと、彼の両手が私の両腕を掴む。
そして、彼のキスは途端に優しいキスへと変わった。
チゥ… とまるで啄むかのようなキスを何度も。
時が止まったかのような、優しい片付けで。
唇が離れるたびに、彼の視線が交わる。
彼の吐息が、私の吐息と交わる。
その甘いキスに …
少しずつ私の身体は溶けてゆく …
思考も停止してしまうほどに …

