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最後の恋に花束を
第6章 大学一年の冬

昼過ぎの新幹線の中。
私たちは、帰るべき場所へと向かっていた。
何も … 何もなかったかのように、私の隣に座る彼はスヤスヤと眠っている。私はその安らかな表情を横目に溜息を吐く。
こんなはずじゃ…なかったのに…
なんて事を考えながら。
彼と同じように瞼を閉じ、背もたれに身体を委ね身体の力を抜いたその時…-
私の左手がギュッと誰かに握られた。
その感覚にハッとした私は瞼を開け、手元へと視線を向ける。
彼が… 遙の右手が私の左手をしっかりと握っているのが分かった。
その美しい手に…
暖かい掌に…
キュッと胸が締め付けられる…
その時の彼の表情を見る度胸は
私には1ミリも無かった…ー

