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君に熱視線゚
第52章 君に熱視線゚〜愛の鈍行列車〜

先に実家に向かった苗より一足遅く部屋を出て、三つ子達とエレベーターを待つ。

そんな晴樹の背後に悟も普段着に支度を整え立っていた。

「手は大丈夫か…」

「………」

嫌味を含んで背中越しに尋ねた晴樹を悟は冷めた目でちらりと見る。

「なんのことですか」

「さっき壁殴っただろ」

「……ああ、…あれ…ふ…」

「……っ」

惚けた返事の後に鼻で笑った悟を晴樹は咄嗟に振り返っていた。

目があった晴樹に悟は薄く笑って見せる。

「竹刀握るにせよ、筆を握るにせよ手は大事ですからね…」

「………」

「壁は足で蹴りました」

「──……」

笑みを向けて言った悟の言葉に晴樹は思わず目を見開いていた。

優等生顔のすました作り笑みに晴樹はムカつきを覚える。

到着したエレベーターに二人無言で乗り込むと、一緒に着いてきた三つ子は重苦しい空気を纏う背高な二人を下から見上げ、首を傾げていた。

「悟兄ちゃん!後でゲームしにいってもいいか!?」

玄関ロビーに着いたエレベーターから降りながら、陸が悟の服の裾を摘みおねだりする。

せがまれて頷く悟を晴樹は後ろから上下にゆっくり眺めていた。

日増しに大人っぽくなっていってる気がする。その速度はやっぱり成長期に入った健康体の少年の身体だ。

スポーツ万能、成績優秀…そして、名家の御坊っちゃん。

晴樹と互角の物を持っている──

そして晴樹が今思うことは……

苗の好みが普通と一風変わっていることに大笑いで感謝したい。そんなところだった。
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