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エメラルドの鎮魂歌
第5章 青い鳥の唄
…それから一カ月ほど経ったある夏の日のことだ。
「え⁈青山様の援助を受ける⁈
藍…それは本気なの?」
院長室の椅子に座った郁未が、驚きに目を丸くする。
書類を書棚に仕舞っていた鬼塚が振り返り、隻眼を眇めて藍の傍に立つ青山を見つめた。
「…うん。俺…やっぱり絵の勉強をもっとしたい。
青山さんに連れられていろんな美術館や建築を見たんだ。
百聞は一見にしかずだよ…て言われて…。
…俺が知っている絵や彫刻はほんの少しだと知らされた。…俺、もっともっといろんなことを知りたい。
知らないことをたくさん知りたい。
心が震えるような素晴らしい絵や彫刻を見たい。
…そうしていつか俺も誰かの心を震わせるような美しい絵を描きたい。
そう強く思ったんだ」

…青山は、あの日から全くめげることなく藍に誘いを掛け、外に連れ出した。
上野の国立美術館や博物館、東京の美しい聖堂や建築、そして自分の画廊や屋敷の美術品を藍に見せ、驚くほどに広く深い知識や考察を情熱を持って藍に語りかけた。
それは少しも押し付けがましいものではなく、青山の芸術に対する深い愛情を藍に感じさせたのだ。
…そうしてそれはやがて藍に感動と…青山に対しての尊敬の念を静かに与えた。

「…そう…」
「私はこの戦争が終わったら、パリに帰るつもりだ。
…この愚かな戦争はそう長くは続かないだろう。
その時には、藍を連れて行きたい。
あちらで彼に最高の芸術の教育を受けさせたい。
…それから、藍にはこの秋から私の家で暮らさせたいと思っている。
東京芸術学校の校長は私と知己でね。
二学期からそこに通わせようと思っているのだ。
藍の描いた絵を校長に見せたのだが、彼は大変驚いていた。
独学でここまで素晴らしい絵を描く生徒は見たことがないと…。ぜひ専門的な学びを藍に与えたいと熱心に言われたのだ」

青山の口から出て来た言葉や計画は、藍にとっては願ってもない素晴らしいものだった。
この学院に居ては受けられない恩恵の数々である。

郁未は慎重に尋ねた。
「…藍にとっては夢のようなお話です。
青山様、つまり青山様は藍を…」

青山はきっぱりと断言した。
「藍を私の養子にしたい。この件は、藍も承知している」
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