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エメラルドの鎮魂歌
第7章 木漏れ日の道
…案内された部屋に通され、窓辺の長椅子に座るひとの姿を見て、藍は思わず目を疑った。
…白い裾の長いドレスを身に着けた…まるで西洋のお伽話の美しい姫君のような少女が、嫋やかに腰掛けていたからだ。
しかもそのひとは、蜂蜜色の美しい長い髪にエメラルド色の瞳をしていたのだ…。
…俺は…篠宮の家の長男に会いに来た筈なんだけどな…。
藍はぼんやりと考えた。
…このひとは、妹なのかな?
瑞葉って長男は別にいるのかな…。
少女は藍を見て、驚いたようにその美しいエメラルドの瞳を見開いた。
八雲が少女に近づき、優しく語りかけた。
「…瑞葉様。こちらが以前お話しした藍様です。
…先代伯爵様の…お祖父様のお子様です」
「え⁈瑞葉…て…もしかして…あんた…男⁈」
藍は思わず叫んだ。
八雲が恐ろしい殺し屋のような鋭い眼差しで藍を睨んだ。
瑞葉は、ああ…とふわりと美しい花が綻ぶように微笑った。
「…貴方が藍さん…。お祖父様の息子さん…という事は、僕の叔父様なのですね?」
藍はぶんぶんと首を振った。
「やめてくれよ。俺はまだ十五だぜ?あんたより三つも年下なんだから」
「十五歳?じゃあ、弟の和葉と同い年ですね。
初めまして、藍さん。お会いできて嬉しいです」
瑞葉は思いがけない人懐っこさで、藍に話しかけてきた。
八雲は驚いたように目を見張っていた。
藍は差し出された作り物のように白く美しい手をぎこちなく握りしめた。
…十八歳と言うのには、あまりに儚げで頼りなげなか細い手だった。
また、曰く付きの祖父の隠し子に対面したと言うのに、彼からは困惑の気配も微塵も感じなかった。
戸惑う藍に、瑞葉は古典絵画から抜け出してきたような美貌を輝かせて笑った。
「この家に和葉以外の人が来てくれたのは、初めてです。
…藍さん、ありがとうございます」
その笑顔は余りに屈託がなく無垢で、藍の胸は図らずも甘く疼いた。
傍に立つ青山が、得意げに八雲に囁いた。
「どうだね?やはり私には先見の明があるだろう?」
…白い裾の長いドレスを身に着けた…まるで西洋のお伽話の美しい姫君のような少女が、嫋やかに腰掛けていたからだ。
しかもそのひとは、蜂蜜色の美しい長い髪にエメラルド色の瞳をしていたのだ…。
…俺は…篠宮の家の長男に会いに来た筈なんだけどな…。
藍はぼんやりと考えた。
…このひとは、妹なのかな?
瑞葉って長男は別にいるのかな…。
少女は藍を見て、驚いたようにその美しいエメラルドの瞳を見開いた。
八雲が少女に近づき、優しく語りかけた。
「…瑞葉様。こちらが以前お話しした藍様です。
…先代伯爵様の…お祖父様のお子様です」
「え⁈瑞葉…て…もしかして…あんた…男⁈」
藍は思わず叫んだ。
八雲が恐ろしい殺し屋のような鋭い眼差しで藍を睨んだ。
瑞葉は、ああ…とふわりと美しい花が綻ぶように微笑った。
「…貴方が藍さん…。お祖父様の息子さん…という事は、僕の叔父様なのですね?」
藍はぶんぶんと首を振った。
「やめてくれよ。俺はまだ十五だぜ?あんたより三つも年下なんだから」
「十五歳?じゃあ、弟の和葉と同い年ですね。
初めまして、藍さん。お会いできて嬉しいです」
瑞葉は思いがけない人懐っこさで、藍に話しかけてきた。
八雲は驚いたように目を見張っていた。
藍は差し出された作り物のように白く美しい手をぎこちなく握りしめた。
…十八歳と言うのには、あまりに儚げで頼りなげなか細い手だった。
また、曰く付きの祖父の隠し子に対面したと言うのに、彼からは困惑の気配も微塵も感じなかった。
戸惑う藍に、瑞葉は古典絵画から抜け出してきたような美貌を輝かせて笑った。
「この家に和葉以外の人が来てくれたのは、初めてです。
…藍さん、ありがとうございます」
その笑顔は余りに屈託がなく無垢で、藍の胸は図らずも甘く疼いた。
傍に立つ青山が、得意げに八雲に囁いた。
「どうだね?やはり私には先見の明があるだろう?」