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エメラルドの鎮魂歌
第7章 木漏れ日の道
ランプを手に、瑞葉の部屋を訪れる。
寝台に腰掛け、背中を見せる瑞葉が視界映る。
…彼はやはり藍の絵を手に、項垂れていた。

「…藍さんは…僕を許してくれたのかな…」
振り返ることなく、小さな声が自問するように問いかける。

堪らずに八雲はランプを置き、歩み寄る。
「貴方は何も悪くない。諸悪の根源は私です。
…私が貴方も藍様も傷つけた…。故意に傷つけた。
ただ、私の醜いエゴのために…」
瑞葉がゆっくりと八雲を見上げた。
美しいエメラルドの瞳は、透明な涙で溢れている。
「…八雲…」
手を伸ばし、その美しい貌の輪郭をなぞる。
「けれど私は後悔はしていません。
…これからも貴方の手は離さない。
どんなことが起きようとも…」
瑞葉の白く華奢な手が伸ばされる。
薔薇色の唇が、そっと開かれた。
「…連れていって…。
天国でも…地獄でも…お前が行くところなら、どこへでも…」
その手を引き上げ、強く抱きしめる。
嗅ぎ慣れた伽羅の薫りに包まれる。
合わせるだけの静謐な口づけを交わす。
言葉は交わさなかった。
どちらからともなく唇を離し…寝台に置かれた藍の絵を見つめる。

…キャンバスの中の瑞葉は、木漏れ日を浴びながら無垢に微笑んでいた。


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