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エメラルドの鎮魂歌
第8章 エメラルドの鎮魂歌 〜終わりの序曲〜
和葉は、この春二十歳になった。
背は更に高く伸び、八雲と目線がさほど変わらなくなった。
長躯に美しい筋肉がきちんと付き、すらりと美しい脚が長く腰の位置が高いのは、やはり西洋人の血が流れているからだろうか。
やや明るめの髪は海軍の規則をさり気なく破るくらいには長めに揃えられている。
肌は白いが、蒼ざめた白い花のような瑞葉のそれとは異なり、温かみのある柔らかな白さであった。
琥珀色の瞳は相変わらずだが、以前の子どもっぽくよく動く軽快さはなりを潜め、冷静で落ち着いた表情が取って変わられていた。
士官学校では常にトップクラスであったという成績は文武に渡り、それは和葉におおらかな自信と大人びた雰囲気を与えていた。

…和葉は、この四月から広島の呉に配属されていた。
三月に士官学校を卒業し、念願の海軍に進路が決まり、彼は嬉しげに瑞葉に報告をしてきた。
「兄様、ようやく軍艦に乗れるよ。
日本一の軍艦だ。最新式の軍艦だよ。
大海原をどこまでもどこまでも進むんだ…。今から楽しみだよ」

…その和葉が今日、久しぶりに軽井沢の屋敷を訪れる。
瑞葉は朝からそわそわと落ち着かなかった。
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