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エメラルドの鎮魂歌
第8章 エメラルドの鎮魂歌 〜終わりの序曲〜
恐ろしいほど静まり返った沈黙が、二人の間を支配した。
漸く口を開いたのは、瑞葉であった。
「…嘘…だよね…八雲が…そんなこと…するわけない…よね」
そのぞっとするほどの冷ややかな美貌は表情ひとつ変えない。
「…嘘でしょ?僕の為に…和葉の大切な将来を利用したなんて…」
瑞葉の華奢な手が八雲の腕を強く捉える。
どこにそんな力があったのかと、驚くほどの力であった。
「…いいえ、瑞葉様。すべては真実でございます」
初めて八雲の返答があった。
八雲の頬が、鋭く音を立てた。
彫像のような端麗な貌は微動だにしなかった。
瑞葉は人に手を挙げたことなど未だ嘗てなかった。
ましてや、愛する八雲に手を挙げるなど…。
自分でも、そのことに対する衝撃と…何より八雲の口から発せられた信じ難い事実に驚愕の余り、身体を震わせる。
「…なぜ…なぜ、和葉に…!なぜそんなことをしたの⁈
そんなことをしなくても!和葉は僕のことをいつも考えてくれているのに!」
八雲は静かに口を開いた。
「…すべては貴方の為でございます。瑞葉様」
八雲の大きな手が華奢な腕を掴む。
「私は、貴方に非情な処遇をした薫子様が許せなかった。
…いえ、同じご兄弟なのに生まれた時から何もかも恵まれ、持たぬものは何もない和葉様が許せなかった…静かに憎んですらいたのです。
貴方には私しか居らず愛情に飢えていた為に、歩けることをずっと秘密にしておられた。
…私は…貴方に代わって薫子様に…そして和葉様に復讐をしたのです。
…なぜなら…貴方を誰よりも愛しているからです。
貴方は私の命だからです。
…貴方は私のすべてだ。
その貴方の為ならば、私は悪魔に魂を売り渡しても構わないと決意したからです」
その手を渾身の力で振り払い、取り乱したまま叫ぶ。
「そんなの…そんなの愛じゃない!
お前の愛は間違っている!…そんな歪んだ愛なんて…僕は要らない!
…お前なんか…お前なんか嫌いだ…大嫌いだ!」
初めて、八雲の完璧な美貌が苦しげに歪んだ。
「…瑞葉様…」
自分の言葉に怯え、瑞葉は唇を抑え…枕に突っ伏した。
「…出て行って…!
今は…お前の貌も見たくない…!」
…それは、生まれて初めての八雲への拒絶の言葉であった。
漸く口を開いたのは、瑞葉であった。
「…嘘…だよね…八雲が…そんなこと…するわけない…よね」
そのぞっとするほどの冷ややかな美貌は表情ひとつ変えない。
「…嘘でしょ?僕の為に…和葉の大切な将来を利用したなんて…」
瑞葉の華奢な手が八雲の腕を強く捉える。
どこにそんな力があったのかと、驚くほどの力であった。
「…いいえ、瑞葉様。すべては真実でございます」
初めて八雲の返答があった。
八雲の頬が、鋭く音を立てた。
彫像のような端麗な貌は微動だにしなかった。
瑞葉は人に手を挙げたことなど未だ嘗てなかった。
ましてや、愛する八雲に手を挙げるなど…。
自分でも、そのことに対する衝撃と…何より八雲の口から発せられた信じ難い事実に驚愕の余り、身体を震わせる。
「…なぜ…なぜ、和葉に…!なぜそんなことをしたの⁈
そんなことをしなくても!和葉は僕のことをいつも考えてくれているのに!」
八雲は静かに口を開いた。
「…すべては貴方の為でございます。瑞葉様」
八雲の大きな手が華奢な腕を掴む。
「私は、貴方に非情な処遇をした薫子様が許せなかった。
…いえ、同じご兄弟なのに生まれた時から何もかも恵まれ、持たぬものは何もない和葉様が許せなかった…静かに憎んですらいたのです。
貴方には私しか居らず愛情に飢えていた為に、歩けることをずっと秘密にしておられた。
…私は…貴方に代わって薫子様に…そして和葉様に復讐をしたのです。
…なぜなら…貴方を誰よりも愛しているからです。
貴方は私の命だからです。
…貴方は私のすべてだ。
その貴方の為ならば、私は悪魔に魂を売り渡しても構わないと決意したからです」
その手を渾身の力で振り払い、取り乱したまま叫ぶ。
「そんなの…そんなの愛じゃない!
お前の愛は間違っている!…そんな歪んだ愛なんて…僕は要らない!
…お前なんか…お前なんか嫌いだ…大嫌いだ!」
初めて、八雲の完璧な美貌が苦しげに歪んだ。
「…瑞葉様…」
自分の言葉に怯え、瑞葉は唇を抑え…枕に突っ伏した。
「…出て行って…!
今は…お前の貌も見たくない…!」
…それは、生まれて初めての八雲への拒絶の言葉であった。