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エメラルドの鎮魂歌
第8章 エメラルドの鎮魂歌 〜終わりの序曲〜
…信じられない…。
八雲が、そんな酷い策略を巡らしていたなんて…。
和葉を、そんなにも憎んでいたなんて…。
瑞葉は唇を噛みしめる。
…初めての八雲の裏切り行為であった…。
瑞葉の全く知らない八雲が、そこには確かに存在していたのだ。
八雲に対して、このような思いを抱くことがあるなんて、想像だにできなかったことだ。

…やがて、想いは和葉に移りゆく…。
戦死のその文字が蘇り、胸を激しく痛みつける。

和葉…愛おしい愛おしい弟…。
明るくて優しくて太陽の煌めきを集めたかのように美しくて…いつも瑞葉の心を照らしてくれたたった一人の弟…!
和葉は瑞葉の永遠の憧れの存在だった…。
戯れと言うにはあまりに甘美な口づけを交わしたのは、ほんの少し前の出来事だと言うのに…。
…その弟が…和葉が死んでしまった…!

嘘だ…信じられない…嘘に決まっている…。
…添えられたお母様からの手紙には、爆撃によりその軍艦は太平洋沖の海底に沈められ、遺体も上がらなかった…と書かれていた…。
なのに、なぜ死んだと決めつけるのだろうか?

…恋人…そうだ、和葉の恋人は航空部隊所属だと言っていた…。
彼は、瑞葉の最期をもう聞かされたのだろうか?

…そこまで考え、はっと我に帰る。
最期だなんて…!
和葉は…和葉はまだ生きている!
生きているに決まっている!

いつ果てるとも知れぬ涙は、瑞葉の血の気の失せた頬を濡らし続けた。
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