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エメラルドの鎮魂歌
第8章 エメラルドの鎮魂歌 〜終わりの序曲〜
日本が敗戦国となり、早半年が過ぎた。
年が明け、暦は変わったが軽井沢の屋敷と瑞葉たちには特段の変化はなかった。
東京の食料事情と治安の悪さは伝わっては来たが、ここ軽井沢は日々の食料に事欠くことはなかった。
周りの別荘地に疎開していた特権階級の人々も少しずつ東京に帰京し、元の生活に戻り始めていた。

辺りの住民も次第に少なくなり、いつしか瑞葉は誰に臆することなく、自由に出歩き始めるようになっていた。
街まで出ることはなかったが、屋敷周辺には愛犬を連れ、散歩することも増えていった。
服装は相変わらず、中世の姫君が身に纏うような古典的なドレス姿であった。
八雲がそれ以外、着せようとしなかったからだ。


…やがてその姿を目撃した村人から、離山に住まう謎めいた美しき伯爵令嬢として、密かに噂されるようになっていたのだ。

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