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エメラルドの鎮魂歌
第10章 エメラルドの鎮魂歌 〜二つの月〜
「瑞葉は穢れてなんかいない!あんたは凄く綺麗だ!
あんたは何も悪くない!騙したのはあいつだ。
だから…頼むから…自分を責めるな…」
叱りつける声…温かな力強い腕…。
涙が止めどなく流れだす…。
「…藍さん…」
あやすように髪を撫でられる。
そっと唇を押し当てられる。
…まるで、和葉に抱かれているような安心感に包まれる。
震える手で、背中を抱く。
…自分とは違う…細身だが引き締まった筋肉に覆われた身体…。
八雲とはまた違う…若い男の身体だ。
…考えてはならない…。
あの男は、悪魔だったのだから…。

瑞葉は眼を硬く閉じ、その胸に貌を埋める。
…何もかも失った自分に…こんなにも優しくしてくれる存在に寄りかかってしまうことを酷く恥じる。
慌てて離れようとする瑞葉を、藍は更に強く掻き抱く。
「…俺を頼ってくれ。…俺は…あんたが…瑞葉が好きだ…。
ずっと好きだった…会いたかったよ…瑞葉…」

そっと腕が解かれ、壊れものに触れるように顎に手をかけられた。
…温かい手…。
藍は、何もかもが温かい…。
…瑞葉を見つめるその眼差しすらも…。

瑞葉を怖がらせないように、静かに囁く。
「…好きだよ…瑞葉…。あんたを…幸せにしたい…」
「…藍さ…」
…問いかける唇に、ひたすらに優しい口づけを与えられる。

…満身創痍な瑞葉に、拒めるすべはなかった…。
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