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エメラルドの鎮魂歌
第10章 エメラルドの鎮魂歌 〜二つの月〜
書斎の扉を開ける。
「…また眠ったよ…。すごく…疲れているみたいだ…」
そう声を掛けると、窓辺の椅子に座り分厚い美術書に目を通していた青山が振り返る。
「そうか…。寝かせてやりなさい。今は眠りが何よりの薬だ」
…穏やかな優しい言葉と表情…。
その眼差しに嘘偽りはない。

「…史郎さん、怒らない?」
「うん?」
少し躊躇しながら口を開く。
「…俺、瑞葉にキスをした」
青山が、まるで掘り出し物の美術品を見出した時のように眼を見張った。
「ほう…!それはそれは…。
あの美の女神のような瑞葉くんと美青年の藍との口づけか…。
まさに耽美でロマンティックな絵画のような光景だったろうね」
…少しの妬心めいた表情もなく感心する青山に、呆れたように近づく。
「あんた…本当に変わっているね。
嫉妬とか気を悪くするとか…ない訳?」
青山は愉快そうに笑い、藍の手を引き寄せた。
長椅子の隣に座らせ、慣れた手つきで髪を撫でる。
「私は博愛主義者なんだ。愛するものが美しいひとを愛でている光景は、大好きだ。
…ましてや瑞葉くんは、私の美的感覚を著しく唆る存在だ。
…藍が私から去らないのなら、何をしても構わない。
私のことは好きだろう?」
その手入れの行き届いた美しい…けれど男らしい手を握り締める。
「好きだよ。あんたのことは尊敬してるし…すごく特別に思っている。
…でも…瑞葉も好きだ。…放っておけない。俺が守ってやりたい。…二度とあんな奴のところに行かせたくない。
…それでも構わない?」
「いいじゃないか。愛は人の心を成熟させる。瑞葉くんのことも私は精一杯力になるつもりだ。
…だが…あの子に恋するのはやめておきなさい」
最後の一言は穏やかだが、有無を言わせぬものだった。
「どうして?…瑞葉と俺は血は繋がっていないんだ。
…そりゃ、同性同士だけど…」
思わず言い返す藍を静かに諭すように告げる。
「瑞葉くんは確かに美しい…。禍々しいほどにね…。
けれどあの美と魔性は、決して藍には相容れないものだ。
君とは合わない。
…彼は、現実世界と隔絶されたところに存在していて、それがあの不吉なまでの美しさと妖艶さを体現しているのだよ」
「なんだよ、それ…」
眉を寄せる藍の唇に、しなやかに成熟したキスを落とす。
「彼に恋するのはやめなさい。
…その恋は、決して成就しないだろう。私は藍の哀しむ貌は見たくない」


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