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エメラルドの鎮魂歌
第12章 エメラルドの鎮魂歌 〜瑠璃色に睡る〜
静寂を切り裂くような叫び声が上がる。
「ふざけるな!忘れろ?忘れられると思うのか?
お前を…お前と過ごした日々を…!お前に抱かれ…お前に身も心も変えられた日々を…!簡単に…忘れられると思うのか⁈
…お前に溺れ…お前以外見えないようにされて…お前がすべての日々を送って…それを忘れろと…忘れて新しい人生を生きろと…よくも…よくもそんな簡単に…!」
瑞葉の陶器のように白い頬に透明な涙が伝い始める。
「…瑞葉様…」
瑞葉は己れの華奢な身体を抱き締める。
「忘れられるわけがない…!お前を…どうして、忘れられるんだ!
…お前が憎い!憎くて憎くて堪らない!
殺してしまいたいくらいに憎いけれど…でも…同じくらいに…」

瑞葉のエメラルドの瞳が鋭く八雲を捉える。
次の瞬間、真っしぐらに駆け寄りその首筋に腕を絡め…強く引き寄せる。
「…それ以上に…愛している…!愛している…!」

八雲の深い瑠璃色の瞳が、驚愕に見開かれた。
「瑞葉様…!」
「愛している…愛している…愛し…」
その先の言葉は、形にならず八雲の熱く激しい口付けに奪われる。
「…瑞葉…!」
慟哭するかのように名前を呼ばれる。
瑞葉は柔らかな唇を開き、自ら舌を差し入れる。
男の熱い舌がそれを攫い、濃密に…荒々しく絡められる。
「…ああ…や…くも…」
喘ぐように、憎くて憎くて…そして誰よりも愛おしい男の名前を呼ぶ。
「…愛しています…貴方を…再びこの手に抱けた…。
…もう思い残すことはありません…」
掻き口説き、抱き締め、唇を貪る。
「…お前を…愛している…お前が例え血の繋がった父親でも…愛して…いる…僕は…罪深い…」
懺悔するように涙を流す瑞葉のそれを優しく吸い取る。
「すべての罪は私ひとりのものです。
私がすべてを背負い、地獄にまいります…ご案じなさいますな…」
自分の頬を包み込む八雲の大きく美しい手に手を重ねる。
涙に濡れたエメラルドの瞳が微かに微笑む。
「…お前だけを行かせはしない。
僕も連れて行って…」
「瑞葉様…!」
蜂蜜色の美しい髪を撫で、引き寄せる。
愛の飢えを癒すかのように、激しく濃厚な口づけを繰り返す。
そのまま、どちらからともなく寝台に縺れ込み、愛の褥に手を取り合って沈み込む。
…紗幕がふわりと落ち、二人の姿を隠した…。




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