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エメラルドの鎮魂歌
第12章 エメラルドの鎮魂歌 〜瑠璃色に睡る〜
火は一昼夜燃え盛り、完全に鎮火したのは翌々日になってからだった。
警察の現場検証が終わった後、青山と藍は屋敷に入った。
…豪奢なチューダー様式の建物は跡形もなかった。
そして、二人の遺体はとうとうどこからも発見されなかったのだ。
「…どういうことなのだ。全く訳が分からない…」
青山は眉を顰め首を振った。
…瑞葉をここまで送り届けたハイヤーの運転手によると、確かに瑞葉はこの屋敷に入って行ったと証言した。
次の別荘の管理人はこの日の朝、八雲と屋敷で引き継ぎの話をし、鍵を受け取ったと証言した。
…けれど、あの出火ののち、彼らを見たものはただの一人もいなかったのだ。
敷地の外れの池は小舟を出し、中が攫われた。
しかし、何も出てはこなかった。
…不可思議なことはまだあった。
池の畔に植わっている桜の樹の下の土に、真新しく掘り返された痕跡があったのだ。
警察が慎重に調査したが、やはり何も出てはこなかった。
…すべてが焼け落ち、さながら廃墟の城と化した屋敷の中を歩き回っていた藍が声を上げた。
青山が振り返ると、辛うじて焼け残っていた壁面に藍が描いた瑞葉の絵がぽつんと残されていたのだ。
…驚くべきことに、その絵は全くの無傷であった。
「そんな馬鹿な…。部屋も家具も建物もすべてが焼け落ちたというのに…!」
信じられないというように頭を振る青山に、藍はぽつりと呟いた。
「…史郎さん、瑞葉は生きているよ。八雲と一緒に…」
「…藍…」
…とうとう手に届くことはなかった…その心を手に入れることはできなかった永遠の想い人を愛しむように藍はキャンバスの中の光り輝く瑞葉を優しく撫でる。
「…瑞葉は生きている。
…やっと自由になれたんだ…。二人で…。
…良かった…」
やや煤がついたキャンバスの上に透明な涙が一雫、溢れ落ちた。
「…藍…」
青山は、黙って藍を抱きしめた。
その髪に優しくキスを落とす。
「…お前はいい子だ…」
警察の現場検証が終わった後、青山と藍は屋敷に入った。
…豪奢なチューダー様式の建物は跡形もなかった。
そして、二人の遺体はとうとうどこからも発見されなかったのだ。
「…どういうことなのだ。全く訳が分からない…」
青山は眉を顰め首を振った。
…瑞葉をここまで送り届けたハイヤーの運転手によると、確かに瑞葉はこの屋敷に入って行ったと証言した。
次の別荘の管理人はこの日の朝、八雲と屋敷で引き継ぎの話をし、鍵を受け取ったと証言した。
…けれど、あの出火ののち、彼らを見たものはただの一人もいなかったのだ。
敷地の外れの池は小舟を出し、中が攫われた。
しかし、何も出てはこなかった。
…不可思議なことはまだあった。
池の畔に植わっている桜の樹の下の土に、真新しく掘り返された痕跡があったのだ。
警察が慎重に調査したが、やはり何も出てはこなかった。
…すべてが焼け落ち、さながら廃墟の城と化した屋敷の中を歩き回っていた藍が声を上げた。
青山が振り返ると、辛うじて焼け残っていた壁面に藍が描いた瑞葉の絵がぽつんと残されていたのだ。
…驚くべきことに、その絵は全くの無傷であった。
「そんな馬鹿な…。部屋も家具も建物もすべてが焼け落ちたというのに…!」
信じられないというように頭を振る青山に、藍はぽつりと呟いた。
「…史郎さん、瑞葉は生きているよ。八雲と一緒に…」
「…藍…」
…とうとう手に届くことはなかった…その心を手に入れることはできなかった永遠の想い人を愛しむように藍はキャンバスの中の光り輝く瑞葉を優しく撫でる。
「…瑞葉は生きている。
…やっと自由になれたんだ…。二人で…。
…良かった…」
やや煤がついたキャンバスの上に透明な涙が一雫、溢れ落ちた。
「…藍…」
青山は、黙って藍を抱きしめた。
その髪に優しくキスを落とす。
「…お前はいい子だ…」