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エメラルドの鎮魂歌
第3章 禁断の愛の果実
八雲は最初に薫子と踊るのが通例だ。
薫子はその硬質な美貌を和らげることなく、まるで女王陛下のような威厳を漂わせながら、居丈高に八雲と踊る。
深い瑠璃色の瞳の長身の西洋人の如く美しいシルエットを持った八雲は、さながら貴族の貴公子のようで、優雅に薫子をリードするさまは一枚の絵のようであった。
使用人達はもちろん篠宮家の家族、親族も思わず息を呑みその光景に見惚れるのが常であった。
薄桃色のドレスを着て八雲と踊る千賀子は、可憐な少女のようだった。
いつもは薫子の姿に怯え、気配を消すように大人しくしている千賀子だが、この夜ばかりはまるで初めて社交界にデビューした乙女のように初々しく頬を染め、八雲のリードに身を任せている。
和葉は見てはならないものを見てしまったような甘い胸騒ぎを感じたものだ。
八雲は誰と踊ってもその無機質な彫像のような美貌を微塵も変えることなく、滑らかに優美に踊るのだ。
そしてこの場に居るものすべてが、八雲という稀有な美しさと神秘性を兼ね備えた唯一無二の執事がこの屋敷に存在していることの奇跡のような幸運に、心密かに感謝するのであった。
…この完璧な…しかし捉えどころがない孤高の美しさを誇る執事が心ときめかせるひとは、一体どのような佳人なのだろうか…とそれぞれが思いを馳せながら…。
薫子はその硬質な美貌を和らげることなく、まるで女王陛下のような威厳を漂わせながら、居丈高に八雲と踊る。
深い瑠璃色の瞳の長身の西洋人の如く美しいシルエットを持った八雲は、さながら貴族の貴公子のようで、優雅に薫子をリードするさまは一枚の絵のようであった。
使用人達はもちろん篠宮家の家族、親族も思わず息を呑みその光景に見惚れるのが常であった。
薄桃色のドレスを着て八雲と踊る千賀子は、可憐な少女のようだった。
いつもは薫子の姿に怯え、気配を消すように大人しくしている千賀子だが、この夜ばかりはまるで初めて社交界にデビューした乙女のように初々しく頬を染め、八雲のリードに身を任せている。
和葉は見てはならないものを見てしまったような甘い胸騒ぎを感じたものだ。
八雲は誰と踊ってもその無機質な彫像のような美貌を微塵も変えることなく、滑らかに優美に踊るのだ。
そしてこの場に居るものすべてが、八雲という稀有な美しさと神秘性を兼ね備えた唯一無二の執事がこの屋敷に存在していることの奇跡のような幸運に、心密かに感謝するのであった。
…この完璧な…しかし捉えどころがない孤高の美しさを誇る執事が心ときめかせるひとは、一体どのような佳人なのだろうか…とそれぞれが思いを馳せながら…。