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エメラルドの鎮魂歌
第3章 禁断の愛の果実
「だから、僕にワルツを教えて」
頼み込む和葉に、八雲は淡々と告げる。
「私などよりもっと適任者がいるはずです。
…専用の女性のダンス教師か、メイドの中でワルツに達者なものをお探しいたしましょう」
「八雲がいいんだ。教えて」
和葉は意外な頑固さで譲らなかった。

自分は執事だ。
主人の命令は絶対だ。
八雲は淡々と返答をする。
「畏まりました。
今、お稽古なさいますか?」
「…う、うん…」
不意にもじもじとしだした和葉の前を横切り、窓辺に置かれた蓄音機のレコードの表書きを確認し、針を落とす。
…皇帝円舞曲…。
既に用意されていた。


和葉の前に立ち、恭しく手を差し出す。
「私がリードいたします。和葉様は女性役で。
…足型がきちんとマスターできましたら、どちらでも問題ないでしょう」
和葉は頷くと、やや緊張した面持ちで八雲の手を握りしめた。
…瑞葉様より一回りは大きなお手だ…。

「…和葉様のワルツはお上手でしたよ。
ですから、おさらいくらいで大丈夫かと」
夜会で良家の令嬢と踊る和葉を何度か見たことがある。
まだまだ硬さはあるが、音楽的センスが感じられるステップだった。
「全然だめだよ。…僕はやっぱりスポーツの方が好きだ。女の子と踊っても楽しくないし…」
流れてきたヨハンシュトラウスが二人の間のぎこちない空気を少しだけ柔らかく溶かしてゆく。

「…八雲はどうしてそんなにダンスが上手いの?」
和葉は瑞葉より背があるせいで、目線の合い方が異なる。
琥珀色の瞳を真近に感じ、綺麗な色だなと冷静に思う。
貌立ちは瑞葉に似たところは殆どないが、繊細に整った目鼻立ちは貴族的で、そんなところには兄弟の血筋を感じ取れる。
「以前神戸のホテルに勤めておりました時に、西洋人の同僚に教わりました。
ダンスが踊れるとなにかと便利だと勧められたのです」
「へえ…。だから八雲のワルツは洗練されているんだね。
君のワルツはほかの人と全然違うもの」
琥珀色の瞳をきらきらと輝かせて見上げる和葉は、やはり綺麗な少年だ。
「恐縮です。…和葉様、ダンスに上手い下手はあまり重要ではありません。
相手を思い遣ること…そして何より楽しむこと。
…それだけで充分なのですよ」

八雲の言葉に、和葉は眩しそうに長い睫毛を瞬かせた。
そして、切なげな色を瞳に乗せた。
「…八雲は…本当は兄様と踊りたいんでしょう?」


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