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エメラルドの鎮魂歌
第3章 禁断の愛の果実
黒田公爵家の夜会から帰宅した薫子は、銀狐のストールを手渡しながら、八雲に伝えた。
「来月の和葉の誕生日の晩餐会だけれど…」
六月、和葉は誕生日を迎える。
毎年この日は家族だけで盛大な晩餐会を開くことが定例になっていた。
「はい、大奥様」
いつものことゆえ淡々と返事をする八雲の耳に、不意打ちのようにその言葉は飛び込んできた。
「瑞葉も出席させるように。
本人にも申し伝えなさい」
「…は…」
八雲は思わず耳を疑った。
薫子の背後に立っていた和葉も、驚きの表情で祖母を見上げた。
「…お祖母様、なぜ急に兄様を…?」
不審に思うのは、八雲も同じであった。
今まで、薫子はただの一度も瑞葉が家族と共に食卓を囲むことを許しはしなかった。
…いや、家族がいる場所に赴くことすら、禁じていたのだ。
瑞葉は存在していても、存在しない…さながら亡霊のような扱いをされてきたのだ。
「和葉の十五歳の誕生日ですよ。…瑞葉にも祝わせてあげても良いでしょう」
薫子はにこりともせずに、いい置いた。
和葉は満面の笑顔で薫子に抱きついた。
「ありがとう、お祖母様!大好き!」
薫子はその彫りの深い硬質な横顔に微かな笑みを浮かべ、そのまま滑るように玄関ホールを後にした。
「来月の和葉の誕生日の晩餐会だけれど…」
六月、和葉は誕生日を迎える。
毎年この日は家族だけで盛大な晩餐会を開くことが定例になっていた。
「はい、大奥様」
いつものことゆえ淡々と返事をする八雲の耳に、不意打ちのようにその言葉は飛び込んできた。
「瑞葉も出席させるように。
本人にも申し伝えなさい」
「…は…」
八雲は思わず耳を疑った。
薫子の背後に立っていた和葉も、驚きの表情で祖母を見上げた。
「…お祖母様、なぜ急に兄様を…?」
不審に思うのは、八雲も同じであった。
今まで、薫子はただの一度も瑞葉が家族と共に食卓を囲むことを許しはしなかった。
…いや、家族がいる場所に赴くことすら、禁じていたのだ。
瑞葉は存在していても、存在しない…さながら亡霊のような扱いをされてきたのだ。
「和葉の十五歳の誕生日ですよ。…瑞葉にも祝わせてあげても良いでしょう」
薫子はにこりともせずに、いい置いた。
和葉は満面の笑顔で薫子に抱きついた。
「ありがとう、お祖母様!大好き!」
薫子はその彫りの深い硬質な横顔に微かな笑みを浮かべ、そのまま滑るように玄関ホールを後にした。