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エメラルドの鎮魂歌
第4章 美しき森の虜囚
「何だって⁈それは、事実なのか⁈」
八雲から話を打ち明けられた青山は、思わず声を張り上げ驚いた。
その洗練された彫りの深い貌には、予期せぬ驚きに溢れていた。

「はい。事実でございます」
八雲は相変わらず体温を感じさせない表情と声で答える。

「…まさか…そんな…それでは…篠宮の異母兄弟がいるということなのか?それもまだ少年の⁈
しかも、母親は薫子様の手の者に消されて…⁈」
「はい。左様でございます。
私は、数年前に大奥様の侍女からその事実を聞き出し、密かにその少年を探し出しました。
そしてさるところに保護を依頼しました。
…瑞葉様に何かあった時の交渉材料に、保全しておきたかったのです」

呆れたように青山が首を振る。
「…君は…本当に用意周到かつ狡猾だな…」
「なんとでも。私には瑞葉様が全てですので」
八雲は、彫像のような貌で澄ましたように答える。
まじまじと美しき執事を見つめ、苦笑いを漏らす。
「いっそ清々しいまでの耽溺だな。
まあ、私は自分の欲望に正直な人間は好きだがね」

青山は、上等な舶来の上着の隠しからハバナ産の葉巻を取り出し、磨き上げられた靴の踵で燐寸を擦る。
ゆっくりと火を点けたのち、徐ろにどこか楽しげに尋ねる。
「…で?私に頼みとは?
君のことだ。相談ではなく頼みなのだろう。
しかもこちらは受け入れる前提の…ね。
つくづく傲慢な執事殿だ」



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