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卒業祝い
第1章 起

「何でも言うことひとつだけ聞いてくれるって言ったじゃん」
信司は悲しい表情を浮かべるが、ユキは断固として譲らない。
「ムリなことはダメって言ったよ」
「そんなムリなことなのかなぁ」
「あたしがムリって言ったらムリなのっ」
「一緒にお風呂に入るだけじゃん」
「全くいやらしい」
「まだ一度も入ったことないじゃん。入ってみようよ」
信司の言葉を無視して、質問返しをする。
「だいだいさ、お風呂に入ってどうするの?なんでそんなに入りたいの?」
「入りたいから。ユキと一緒に。そんな理由じゃダメかな。ユキは、一緒に入りたくない?」
うんとも嫌とも言わないユキ。
信司は頭に手を回して身体を椅子に反らせた。
「あーぁ、せっかくの卒業なのになぁ」
上を向いてぼやく。
カラになったコーラのストローをいじって、ユキはそれを黙って見つめる。
信司は、それ以上何も言わずに静かに待った。
ユキは今考えている。
彼女は考え出すと長い。
でも、我慢して待たなければならない。
高3のクセに、信司はそういうところに長けていた。
なぜ一個上のユキが、年下の信司と付き合っているのか?
彼のそうした女性の心の機微を見抜く力が幸いしているからだ。
決してタイミングを逃さず、またバランスも崩さない。
始めに口を開いたのは、ユキの方だった。
「だって。どこで入るのよ、お風呂」
「俺んち」
「親いるじゃん」
と目を丸くして言う。
「今日。今いないよ」
「今!今から??」
「そうだよ。さっき今日って言ったじゃん」
真面目な顔で言う信司。
再びユキは黙った。
それを見て
「そうそう、今日さ・・・」
と話題を振る信司。
たわいのない話をゆっくりと笑顔を交えながら語る信司を、この子うまいとユキは思った。
それ以降、二人の間でまったくお風呂の話は出なかったのだ。
小一時間話して、二人はマックを出た。
信司は悲しい表情を浮かべるが、ユキは断固として譲らない。
「ムリなことはダメって言ったよ」
「そんなムリなことなのかなぁ」
「あたしがムリって言ったらムリなのっ」
「一緒にお風呂に入るだけじゃん」
「全くいやらしい」
「まだ一度も入ったことないじゃん。入ってみようよ」
信司の言葉を無視して、質問返しをする。
「だいだいさ、お風呂に入ってどうするの?なんでそんなに入りたいの?」
「入りたいから。ユキと一緒に。そんな理由じゃダメかな。ユキは、一緒に入りたくない?」
うんとも嫌とも言わないユキ。
信司は頭に手を回して身体を椅子に反らせた。
「あーぁ、せっかくの卒業なのになぁ」
上を向いてぼやく。
カラになったコーラのストローをいじって、ユキはそれを黙って見つめる。
信司は、それ以上何も言わずに静かに待った。
ユキは今考えている。
彼女は考え出すと長い。
でも、我慢して待たなければならない。
高3のクセに、信司はそういうところに長けていた。
なぜ一個上のユキが、年下の信司と付き合っているのか?
彼のそうした女性の心の機微を見抜く力が幸いしているからだ。
決してタイミングを逃さず、またバランスも崩さない。
始めに口を開いたのは、ユキの方だった。
「だって。どこで入るのよ、お風呂」
「俺んち」
「親いるじゃん」
と目を丸くして言う。
「今日。今いないよ」
「今!今から??」
「そうだよ。さっき今日って言ったじゃん」
真面目な顔で言う信司。
再びユキは黙った。
それを見て
「そうそう、今日さ・・・」
と話題を振る信司。
たわいのない話をゆっくりと笑顔を交えながら語る信司を、この子うまいとユキは思った。
それ以降、二人の間でまったくお風呂の話は出なかったのだ。
小一時間話して、二人はマックを出た。

