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秘めた花は彼の腕の中で咲く
第15章 大事なものが離れていく
出張に行くなら親会社での仕事もあるから、もっと忙しくなるよね…
聞くなら、今しかない…
「舞花…どうした?」
「繁正さん…この前繁正さんが電話してるの聴いちゃったんですけど…」
そう言うと、繁正さんの表情がサッと曇った。
ここまで言ったら、もう引き下がれない。
「お、お見合いするって…」
「…言ったよ。お見合いに行くと」
「……!」
「それ以外の話は聴いた?」
「いえ…」
泣きそうになるのを堪え、歯を食いしばって気持ちを抑える。
「お見合いは会社の上司から頼まれててね。相手がどうしてもって聞かないらしいんだ」
「本当ですか?」
「うん…ごめんね舞花。そんな顔しないで…」
頰を撫でながら、繁正さんの方に顔を向けられる。
金具が外れていたのか、ウィッグが地面に落ちる。
「あ、ちょっと…」
「上からの頼みでも、大事な彼女を裏切る真似をして、俺はダメだな…」
「いえ…」
「もうお見合いには行かないよ、きちんと断る。だから泣かないで」