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秘めた花は彼の腕の中で咲く
第7章 嫌な事は全部、俺が忘れさせる
繁正さんの他に人は居なかったが、彼のジャケットからズボンにかけて、濃いシミを作ってしまった。
「も、申し訳ありません!」
床に落ちた湯呑みも拾わずに、繁正さんのスーツにハンカチを当てた。
それでシミが消えるはずも無く、泣きそうになった。
自分の不注意で、目上の人にお茶をかけてしまった…
しかも1番かけちゃいけない人に…
本当に今日は最悪だ…
涙を堪えていると、ポンと優しく頭を撫でられた。
恐る恐る顔を上げると、いつも見せてくれる優しい笑顔があった。
「舞花ちゃんにはかかってないか?」
「えっ?」
「お茶だよ。俺は熱くないから大丈夫」
「で、でもスーツが…」
「あー。近々新しいのを買おうと思ってたんだ」
「でも…」と言いかけたたころで、繁正さんに口を塞がれた。
「気にしてないから、君も気にするな」
「ふ、ううっ…」
私を安心させる為に言ってくれたんだろうけど、私はその言葉で力が抜けて泣いてしまった…
「おいおい、泣くなよ…泣かれたらどうしたらいいか分からなくなる…」
「ご、ごめんなさい…」
「謝らないで…ああ…」