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第8章 歩
「歩……明日から暫くお父さんとこに居るんだよね」
「ああ、仕方ないさ。アパートの上の階の人がボヤ騒ぎ起こして、俺の部屋水浸しなんだもん。
保障はして貰えるから良かったけど、次に住むとこ見つけるまでは厄介になるしかないな」
「だったら、私と一緒に住めばいいじゃん」
「和香奈のとこ女子寮でしょ」
「寮を出て、歩と同棲してもいいかなって思って」
「俺、そういうのパス。まだ結婚とかの段階じゃないし」
「結婚考えながらの同棲でもいいじゃん。歩と一緒にいたいんだもん!!」
「いずれはそういう事を視野に置いて同棲するにしても、俺、社会に出て1年ちょいだよ。
まだまだ女と暮らせる身分じゃない。
ちゃんと和香奈を養えるまではそういうのは遠慮したい」
「あっ……私、重いよね……ごめん。ごめん〜忘れてね。なんか夏帆さんと星空ちゃんの幸せそうな写真見ていたら感化されちゃったみたい。今のはナシで宜しく」
「いずれちゃんと考える日が来るから。ただそれが今じゃないだけだから」
「じゃあ、ちゃんと考えてくれる日待ってるよ」
俺の遠回しに格好つけた断り文句を、そんな健気な言葉で返されると胸がチクリと痛むよ……
俺、授かり婚の失敗作だからさ……