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第9章 欲しがりや

 そういう地獄をこれから和香奈に見せるのか?
憐れみや同情に似た感情が俺を支配し始めた。
だけど……
光輝は和香奈と恋愛して、考え方の違いが生じて別れるだけだ。
誰だって好きな相手と毎日いたい。
でも、その気持ちが無くなったら離れるしかないんだ。
光輝は間違ってない。
和香奈を最期に思いやる気持ちがあったから、悩んだし、俺に相談したに違いない。

「やっぱ、歩に相談して良かったわ。
早めに和香奈に伝えるよ」

「そうしてやれよ」

「もう一つ正直に言うわ。
俺、他に好きな女が出来たんだ」

「何だよ、それ!」

「一緒に居て楽なんだよ。
和香奈は好きだった。でも俺には重いんだよ。まだまだやりたい事いっぱいあるし、将来的なもんなんて、いろんな事にチャレンジしてから考えたい。
結婚とか遠回しに仄めかされると正直引くんだわ。
段々会うのも億劫になったっていうか、他の女に逃げたくなって、その女の方がぶっちゃけ居心地が良いんだ。
そんな気持ちで和香奈と付き合うの無理」


「それを言うのは俺だけにしとけ!
和香奈を地獄に突き落として、針の山まで越えさせる気か?
血の池地獄に沈めるのか?
お前は口が裂けても、それだけは絶対に言うな!」

「……分かった」

 我を忘れてムキになるなんて……
あの時の親父の姿が目に焼きついていて離れなくて……
親父や俺を裏切った母親の顔が光輝と重なり、心の動揺が上手く隠せなかったんだ。
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