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第11章 壊れるほどに 奪って

 暫くは、俺の就職が決まった話をすると「なら祝い酒」と和香奈が言うから歌も歌わずに適当なツマミを取って食べながら暫く飲んでいた。

 勿論、光輝の話には触れず、当たり障りのない日常会話などをしていたんだが……

 わざと明るさを保とうとしてなのか、いきなりデンモクを取り出してアニソンやボカロなどを歌い出す和香奈。
互いに酔っぱらってきたので、二人でカラオケ大会になった。
採点機能を利用して争ってみたりもした。
なるべく明るい気持ちになる曲を選択し、モノマネもどきをしながら歌う俺。
和香奈はそんな俺を手を叩いて喜んで見ていたが、本当の笑顔はそこにはなかった。

「和香奈……言っていい?」

「何?」

「かなり音痴だな」

「音痴を笑うな!」

「笑ってないよ。歌がやたらうまい奴より好感持てるし、楽しく聞いてられる」

「あはは〜実はユーチュー○で歌ってる動画アップした事ある」

「勇気あんな!かなりの黒歴史」

 かなりウケる(笑)

「笑うな〜歩!!」

「笑うだろ?その動画はまだあんの?」

「あるわけねーだろ!」

 少しだけいつもの和香奈に戻った。
チャレンジ精神旺盛で時々ぶっ飛んだ事をやるとこは、面白くて退屈しない。

「そう言えばさ、和香奈は石原さとみのモノマネメイクした事あったな」

「あれもかなり勉強したんだよ。
メイク雑誌読みあさったり、ザワチンのブログ読んでメイクの勉強してさ」

「100メートルくらい離れたら、石原さとみだった」

「100メートル離れたら、顔なんて見えないだろ!」

 そうそう。こういうやり取りを笑って出来る女はいい。
いじめ甲斐がある、可愛い女。



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