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第11章 壊れるほどに 奪って

次の瞬間、堰を切ったように和香奈は泣き出してしまった。
ワンワンと声を上げ、肩を震わせ、大粒の涙を流す。
ここがカラオケボックスで良かった。多分、思い切り泣きたかったんだよな?
一人で抱えていた感情が重すぎて、壊れてしまう前に助けて欲しかったんだよな?
あいつの事でいろいろと俺に聞きたい事もあったんだろ?
でも、聞いたとこでどうにもならないもんな。
大切だと思っていた人に突然サヨナラされるって、暗い場所に取り残されたように不安で悲しくて、その世界から中々這い上がっていけないんだよな?
分かるよ。俺、経験者だから。
そっと和香奈を抱き寄せて髪を撫でた。
「泣くのは我慢すんな。
辛い感情も吐き出せよ。
今の俺は和香奈よりほんの少しだけ心に余裕あっから、自分が苦しいと思う感情は俺に投げても構わないから」
母さんが出て行った日、まだ子供だった俺はばあちゃんにこんな風に慰められた。
変にツッパって跳ね除ける事も出来ないくらい弱った心は、誰かに優しく抱きしめて貰う事で、悲しみがこれ以上押し寄せてこないよう、盾となってくれるような気がした。
冷えた心には、人肌の温もりを必要とする時もあるよな…

