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スパイス
第17章 世界一の不器用者
「海鮮もんは食べたし、昨日はステーキも食べたしな…。
う~ん……何がいいかな?蕎麦とかでもいいし、ファミレスもアリだな。
夏帆は何食べたい?」
一人で居酒屋でイカワタをつまみながら冷酒でグイッとやりたいわ。
一人でな!!
「えっ、あっ、簡単なもんでいいんじゃない?歩君は何が食べたいのかな?」
「あっ、もしもし、お前は何が食べたいんだよ?お前がご馳走してくれるなら、お前の好きなもんにしようぜ」
立派な社会人になって、父親に食事をご馳走する孝行息子。
お利口さんなんだけど、何考えているか分からない一面もあるし、ややとっつきにくい外見は聡に全然似てない。
多分、歩君は母親似ね。
涼子さんってあんな感じの人なんだろうな……
戸籍上は私の息子の歩
私自身も母親というのは名ばかり
隔たりの壁を様子を伺いながら覗き込み、お互いに礼儀という目に見えた枠の中では上手くやろうとする、非常に面倒臭い関係。
真実の鏡はそんな風に私と歩の姿を映し出す。
「夏帆、ファミレスでいいかって歩が。
それなら自分が食べたいもんを食べられるし、星空も喜ぶんじゃないかってさ」
「あっ、うん。そうだね。歩君に感謝だね!」
良い子過ぎるのよ。本当に良い子過ぎて苦手だわ…