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スパイス
第2章 夏帆
ママを家の近くで降ろした後、パパはタクシーの運転手さん相手に話を聞いて貰っていた。
「彼女と今日初めてのデートだったんですけど、何だか不思議な縁を感じるんです。
勘違いじゃないといいなって思うんですけど……」
「それはお客さんの直感なんじゃないの?
羨ましい限りです。
わたしなんかが忘れちまった感情ですよ。
そういう新鮮な気持ちは大事にしないとね」
「有難う御座います。大事にします」
「お客さんを降ろしたら、わたしの仕事も上がりなんですけどね、いいお客さんで終われる日はわたしもラッキーなわけです。
人の心ってのは良い事も悪い事も伝染しますからね。
幸せな方向を目指していたら間違いないですよ!」
初老の運転手さんは愛想が良く、俺の聞きたい事を耳に届けてくれた。
普段のパパならタクシーに乗っても、運転手さんにフレンドリーに話掛ける事はしない。
この日は酔いも手伝い、それくらい浮かれていたんだな。
きっと……