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第1章 Dear 聡

 聡は、結婚してからも毎年私を旅行に連れ出してくれた。
星空が生まれてからも、それは変わらず続いた。
世間ではこんな聡をいい夫、イクメンなどと呼ぶのだろう。


 前の結婚では毎年旅行に行くなどという事もなく、いざ旅行に行くとなると前夫の両親がくっついてきて、旅行中も息抜きなど出来なかった。
前夫の実家の近くに住み、度々元義母がお構いなしに訪問にうんざりしていたのも離婚理由の一つだが……

 元義母は、何でも思った事を考えなしに口にするタイプだった。

 『孫は諦めなきゃいけないのかしら?
ちゃんと病院で診て貰ったの?
夏帆さんの事をキャリアウーマンっていうのよね。
朔太郎(前夫)の嫁は、仕事が出来る嫁よりも家の事してくれる人がいいのに……
夏帆さん35でしょ?
タイムリミット迫ってるわよ』

 これを言われたら、人は傷つくという事を元義母は知らない人のようだ。

 一生交わる事のない平行線上に居る人間なんだと思った。

 離婚前はそんな元義母の訪問が頻繁に続き、その度に嫌味を言われて精神的に私は追い詰められていった。
前夫の朔太郎は母から責められる私を見て見ぬ振り。
朔太郎はマザコンだった。
母に逆らえず、私の味方になる事もなかった。
夫婦仲も次第に冷めていった。

 『義母さん、私に子供が出来ないのは、朔太郎さんとセックスしないからですよ。
それに朔太郎やあなたの血を引く子供もいらないんですよ』

 私の心に棲みついた冷たい魔物が囁いた。
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