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第1章 Dear 聡

 朔太郎と離婚した今でも元義母の悪意のある嫌味は私の心の傷となり残っていた。

 それは時折、現在の夫である聡の言動からあの嫌な記憶を呼び覚まされるからだ。

 プールサイドで聡は夏帆と星空を待っていた。
夏帆は星空の好きなピンク色でフリフリレースがついた可愛いビキニを着させた。
私もなるべく体型が目立たないフィットネスタイプの水着を着た。

 聡が私に手を繋がれた星空を見つけると満面な笑みを浮かべてた。

 「可愛いな……幼児体型でぽっこりお腹のビキニ星空は。
それにしてもママは凄いね。隠しても隠しきれてない感じがさ!」

  聡は悪気のない毒舌男だ。
見たものをはっきりと言うタイプで遠慮がない。
それに自分のルックスには自信を持っている。

 私も水着姿の聡を見る。

 体毛は薄く、逆三体型でシックスパックの持ち主でもある聡の水着姿は文句のつけようがない。

 「パパは失礼だね」

 ムッとする気持ちを抑える。
折角の旅行を喧嘩で台無しにしたくなかった。

 聡は星空と手を繋ぎ、プールの方へ歩き出した。
私は聡の後ろ姿を睨んだ。

 秋生まれの星空の誕生日に前々から旅行を計画し、プールで遊びたいという願いを叶えて、こうしてわざわざ室内プールのあるホテルを選び、家族サービスをしてくれる夫ではないか。

 プールからも目の前の海が見渡せ、秋晴れの最高な景色の中でこれから楽しい家族の時間が始まるんだ。

 そう自分に言い聞かせ、拳を握る。
 
 それでも収まらない怒り

 「お口縫ってあげようか?自分よりも弱い立場の人間にしか威張れない気の小さい自己中王国の大王め!」

 誰にも聞こえないくらい小さな声で呟き、深呼吸をしてから後を追い掛けた。


 私の前にはいつも壁がある。越えられないから心に傷がどんどん増えていく……
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