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ベストパートナー
第1章 アキ
 肉体関係お断り……か。
 俺はそれをやろうとしている。
 不思議でならない。
 ただ一つ言えること、それはアキと今から体の会話をする。


「お待たせしました」


 アキが風呂から出てきた。
 服はまだ着けている。唇に少し潤いがあり、口紅が水に滲んで見える。どうやら歯磨きをした様だ。
 

「煙草臭い息は失礼ですから」


 アキが微笑む。
 大人の可愛らしさに、俺は感情が抑えられなくなった。
 再び俺はアキの唇を唇で塞ぐ。
 煙草臭さはない。
 それがわかると、唇、歯茎、舌を舐める。旦那に染められいる色を、俺が染め直す! そんな勢いで貪った。


「う! うぐ」


 アキが喘ぎながら、舌を絡める。ぎこちない動きが、どこか新鮮で益々心が熱くなった。
 唇を離すと熱い吐息が鼻に吐きかけられ、歯磨き粉のスーッとする独特な香りを放つ。それを俺は吸い込んだ。
 

「洗面所に行きましょう」


 アキが促す。
 俺はコクンと頷き、手を繋ぐ。
 

「あっ!」


 アキの声が漏れる。俺は敢えて手を繋いだ。これは「旦那と俺は違いますよ」を、アピールをするためだった。


「夫は肩に手を回し、力一杯に体を引っ付けるんです痛いくらいに……」


 やはりか。
 大変な旦那だな。
 

 俺は手を繋ぎながら、洗面所に行く。小さな空間だから時間にしてほんの数秒。
 洗面所のドアを開けると、風呂場からお湯が浴槽に注がれる音がしている。ドアは開かれ風呂の広めのスペースが目に入った。
 その広さはベッドルーム並で、なんだか不釣り合いに映る。
 何が不釣り合いかはわからないが、不釣り合いと言う違和感は拭い去れないでいた。
 しかし、そんなことはどうでもいい。
 何故なら、始まるからだ……生まれたままの姿、その会話が。


「私、デブです。幻滅しないで下さい」


 アキが頰を赤らめながら、繋いだ手を強く握る。
 
 
 
 
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