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ベストパートナー
第1章 アキ
1
三分咲きの桜が窓辺に見える場所、そんな喫茶店で珈琲セットを飲んでいる。モカとキリマンジャロのオリジナルブレンドとあり、看板メニューらしかった。
「私の力作です」
マスターが、珈琲を置いて軽く会釈したのは五分前のこと。
珈琲は陶器のカップに並々と注がれていて珈琲の香ばしさが漂っている。その横には小さなケトルに二杯目が入って、さらに口直しに自家製クッキーが四枚。
今は珈琲もクッキーもほんの少しだけ、口にした。味は美味いが、何故か楽しめない。
もちろん理由はある。
スマホを取り出し時間を確かめる。
午前十時半近く、約束の時間まであと少し。
俺の座る二人用テーブル席には、空席がある。
そこにアキと名乗る女を待っていた。
名字も名前も、ない。そんな関係なのだ。
スマホのブクマから、あるキーワードを見つけてクリックする。容姿端麗な女と男が交互に笑顔を振りまいていた。その下にIDとパスワードの記入欄があり、そこには俺の番号と※印が四つあった。
さらにその上にこんな文字がある。
「ベストパートナー」
アキはこのベストパートナーで知り合った女である。
ここまで来れば、ピンときただろう。つまりは出逢い系サイトで見つけた女なのだ。
スマホの時間は十時半を指した。約束の時間である。するとLINEからメールが入ってきた。
LINEをビクビクしながら開くと、少し遅れるとのことだった。
よかった。
深い深呼吸をした。呪いの言葉ではないことに、無意識に笑顔が出る。
「子供が急に熱を出しましたので申し訳ありませんが、キャンセルします」
これが呪いの言葉である。
三分咲きの桜が窓辺に見える場所、そんな喫茶店で珈琲セットを飲んでいる。モカとキリマンジャロのオリジナルブレンドとあり、看板メニューらしかった。
「私の力作です」
マスターが、珈琲を置いて軽く会釈したのは五分前のこと。
珈琲は陶器のカップに並々と注がれていて珈琲の香ばしさが漂っている。その横には小さなケトルに二杯目が入って、さらに口直しに自家製クッキーが四枚。
今は珈琲もクッキーもほんの少しだけ、口にした。味は美味いが、何故か楽しめない。
もちろん理由はある。
スマホを取り出し時間を確かめる。
午前十時半近く、約束の時間まであと少し。
俺の座る二人用テーブル席には、空席がある。
そこにアキと名乗る女を待っていた。
名字も名前も、ない。そんな関係なのだ。
スマホのブクマから、あるキーワードを見つけてクリックする。容姿端麗な女と男が交互に笑顔を振りまいていた。その下にIDとパスワードの記入欄があり、そこには俺の番号と※印が四つあった。
さらにその上にこんな文字がある。
「ベストパートナー」
アキはこのベストパートナーで知り合った女である。
ここまで来れば、ピンときただろう。つまりは出逢い系サイトで見つけた女なのだ。
スマホの時間は十時半を指した。約束の時間である。するとLINEからメールが入ってきた。
LINEをビクビクしながら開くと、少し遅れるとのことだった。
よかった。
深い深呼吸をした。呪いの言葉ではないことに、無意識に笑顔が出る。
「子供が急に熱を出しましたので申し訳ありませんが、キャンセルします」
これが呪いの言葉である。