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ベストパートナー
第3章 ヒトミ
 トラックコースの外を俺はマイペースで走る。お世辞にも速くはないが、それでも何故か嬉しい。
 体力がついている。
 そして何故だか、楽しい。


 こんなことは小説を書き始めて以来かも、好きで物書きになった。会社も辞めて一本で頑張るつもり、だった。そして、何時でも花梨(カリン)は寄り添ってくれる……そう思った。


 俺は走るのを止めた。近くにあるガラスを眺める。外は激しい雨、あの時と同じだった。

 バカだな。もう過ぎたこと、躊躇っても戻れない。よし! はし……。


「すみません、ボーとしてるなら走らないで」

 俺の後ろから声がした。見ると先ほどの、女がイラつきながら、俺を抜いていく。

「ちっ!」


 舌打ちまでしやがったこの野郎! よし、俺だって負けるものかあ。  


 俺は走り出した。もちろんマイペースでだ。ムカつく女が速いから、ついて行ける訳がない。だから俺なりのベストを目指し頑張ってやる。


 しばらく俺は走る。
 何時もより多く走っているが、不思議と疲れはしない。俺の体力がついたのか、もしくは……


「ちくしょう!」


 またかぁ、嫌みったらしい女に触発されたか、おそらくは後者だろう。


 こうなったら、女の邪魔をしてやる! 怒れ怒れ、何が不満か知らないが。


 しばらく俺は走り続けた。
 不思議と足が動き、疲れがない。
 ふとランニングコースにある時計を見た。かなりの時間、ここにいることがわかる。そろそろかな。


 俺は歩き始める。体をあちらこちら目一杯伸ばしストレッチする。
 そして一階に降りようと、階段に差しかかった。


「おい!」


 振り返ると、ムカつく女がいた。


「さっさと帰れ馬鹿野郎!」

 
 そしてまた走り始めた。
 ……この野郎!



 

 

 
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