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咲の旅物語
第16章 王都 ルアール
やっぱり!
あの子が言ってた人だわ!
「あの…奥様は?」
自分の予想通りだった咲は、姿の見えないジャックの妻の所在を聞いた。
途端にジャックが目を伏せる。辛そうに眉を潜め歯を食い縛りながら、拳を震わせた。
「妻は!…妻は私たちを捕らえ、此方に連れてきたミューガン家の長男に連れて行かれました…」
ミューガン家
ルアールでは指折りの貴族だ。だが、その名門の名前に胡座をかき、私腹を肥やす腐った貴族として裏では有名だった。
欲しいものは無理矢理にでも必ず手にいれる。
そして、ジャックの妻。
彼女に執着したミューガン家の長男は彼女を手にいれるため、子供たち諸とも鉱山に監禁したのだとジャックは言った。
「恐らく彼女は、ミューガン家に居るでしょう。」
話をしている間、大粒の涙がジャックの枯れた皮膚を濡らした。
咲の頭は怒りで真っ赤に染まっていた。
あんなになるまで子供たちを働かせ、ジャックを監禁し自分の欲望を満たすためにジャックの妻を拐った。
許せない…
「え?」
咲の呟きにジャックは頭を上げた。
目の前に居たのは、女神の様だった女が一変、怒りに震え無表情に目を赤くする姿だった。
「一先ず、子供たちと貴方を保護します。ミューガン家の事は私たちに任せてください。」
静かに…だが、有無を言わさぬ強い言葉にジャックは頷くしかなかった。