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わがままな氷上の貴公子
第3章 心配

今までの経験からして大したことはないと分かったが、急に立ち上がるのはやめるのが無難だ。
「悠斗っ! 大丈夫!?」
「悠斗くん!?」
千絵も塔子も、大声で「悠斗」と言いやがって……。
こんなリンクでコケてるのが、あの“美少年フィギュアスケーターの望月悠斗”だってバレたら笑い者だぞ?
千絵が慌てて近寄って来る。塔子も驚いた表情で、オレの横で止まった。
足首もだが、潤の下敷きになった体全体が痛い。
お前といたら、いつか本当に背骨を折られるな……。
「悠斗くん、立てる?」
「ああ……」
「悠ちゃん! 動かないでっ!」
大声で言うと、潤がスケート靴を脱ぐ。次の瞬間、オレは抱き上げられていた。
ペアの演技じゃないんだぞっ!
何事かと、周りのヤツらがオレと潤を見ている。
こんなことで注目集めて、どうするんだよっ!
「おいっ、降ろせよっ!」
言ったが、潤には聞こえていない様子。
中にはオレだと気付いたヤツもいたようだ。「望月悠斗?」という声も聞こえてきたから、顔を隠すように潤に掴まった。
「あっ、やっぱり園田千絵だ!」
千絵までバレたようだ。でもあいつは中央で滑っていたから自業自得。
オレと千絵がこんな所で一緒にいるなんて、ネットニュースにでもなったらどうするんだよっ!
「医務室! どこっ!?」
潤は必死な表情で走りながら、人に医務室の場所を訊いている。
靴下だけとは言え、氷の上を走れるなんて成長したじゃないか。
オレのお蔭だけどなっ!
通路へ出ると、潤のスケート靴を片方ずつ持った千絵と塔子も付いてきている。
人は少なくなったが、振り落とされないように潤の首にしがみついているしかなかった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「悠ちゃん……」
情けない声出すなよ。でかい図体して。
スケート場での医務室とタクシーに乗っている間以外は、ずっと潤に抱えられていた。
やっと部屋のベッドに降ろされて安心したが、帰ってきた時、和子さんにも凄く心配されたじゃないかっ!
「ごめん。俺……。本当にごめんね……」
「聞いただろ? 軽い捻挫だって」

