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わがままな氷上の貴公子
第4章  潤



 学校を休んで午前中ゴロゴロしていたのは、昨日の疲れのせいもある。
 昨日は潤の好きにされて、自分が何回イかされたのかも覚えていない。
 “欲しい”とか“もっと”とか、それ以上の言葉も言わされた。思い出すと恥ずかしくなる。
 あいつ。セックスになると人格変わるよな……。
 お互いがシャワーを浴びてリビングへ行ったのは、和子さんが帰って来るギリギリ。
 オレは日頃の疲れが溜まっているからと部屋へ戻ったが、あいつが夕食を食べてから帰ったのは、今朝和子さんに聞いた。
 セックス中に何度かスマホが鳴っていたのは、コーチの鈴鹿から。
 学校から帰ってすぐクラブへ行く予定だったから、何かあったのかと心配していた。眠ってしまったと誤魔化して謝ったが、もう通用しないだろう。
 本当にオレ、何やってんだ……?
 潤に会ってから、おかしくなっている。別にオレがじゃなくて、生活自体が。
 大事なシーズン前なのに、個人練習を休むなんて。こんなペースを続けていたら、表彰台どころかファイナル進出も危うい。
 潤なんて。オレが好きだって言うクセに、塔子といい感じじゃないか?
 腹が立ってきて、ノックの音に溜息をついた。
「はい?」
「悠斗さん。潤くんですよ」
 あいつ、また来やがったか……。
「どうぞ……」
 ベッドから上半身だけを起こして、ドアを見る。
 開いたドアから入ってきたのは、潤と塔子。
「こんにちは」
 笑顔の塔子に、軽く頭を下げた。
 何なんだ? この組み合わせは。千絵は、個人練習だから来られないからか?
 オレだって、もう少ししたらクラブへ行かないと。
「これ。紅茶のリーフなんだけど……」
 塔子が差し出した小箱を受け取る。
「潤くんから、紅茶が好きって聞いたけど、好みが解らなかったから。アップルティーにしたの……」
 オレが一番好きなのはダージリンだけど、今は言わないでおいてやる。
 お前。どこまで塔子に話してるんだ?
 まさかヤったなんて言えないよな?
 昨日ここで、このベッドでセックスしたなんて、言えないよな?
「ん。ありがとう」
 箱を枕元に置いて、営業スマイル。


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