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わがままな氷上の貴公子
第4章  潤


 塔子がホッとした様子で潤を見ると、潤もそれに応えるようにニコニコしている。
 イチャつくなら、ここ以外でやってくれ!
「せっかくだけど。オレ、これからクラブなんだ」
「私もこれで……。潤くん、また明日電話するね」
 そこへ和子さんが紅茶と菓子を持って来た。
「お邪魔しました」
「あら。もうお帰りですか?」
「はい。あの、ちょっと、忙しくて……」
 潤も帰るのかと思ったら、塔子に手を振っている。
 オレは、潤の電話番号なんて知らないぞ? 別に用事なんてないけど。
「潤くん、これお願いね」
 和子さんは潤に盆を渡すと、塔子を送りに行ってしまった。
 餌付けは、こういうためだったのかもしれない。和子さんも、なかなかやるじゃないか。
 ドアが閉まると、テーブルに盆を置いた潤が傍に来る。
「さっき和子さんに聞いたけど。悠ちゃん、今日学校休んだんだって?」
「お前に関係ないだろ……」
 ダルかったのが、昨日のセックスのせいだとは言いたくない。
「怒って、る……?」
「何がっ!」
「やっぱり、怒ってるよね……」
 シュンとした潤が俯く。
「ごめんね……。昨日……。もうあんな無茶、しないから……」
 そうだよな。オレを、欲求不満のはけ口にする必要はないよな?
 最初に誘ったオレが馬鹿だった。
 これからは、勝手に塔子とヤってろ!
「もう、来るなよ……」
 だってそうだろう? 彼女が出来たなら、男のオレとヤる必要なんてないだろ?
 弄ばれるのが、一番ムカつく。
 オレがその気になれば、相手なんていくらでも選べるんだから。
「来ちゃ、ダメなの……?」
 顔を上げた潤が、じっとオレを見つめている。
「帰れよっ!」
 何故かイライラして仕方ない。
 ベッドを降りて、風呂の方へ行く途中で振り返った。
「帰れって言ってんだろ!?」
「悠ちゃん……」
 潤がゆっくりと立ち上がり、ドアを出て行く。
 脱衣所へ入って、バタンとドアを閉めた。
 追いかけても来やしない……。
 ギュっと目を瞑っていると、何故か心臓の音がはっきりと聞こえ、無意識に溜息をついていた。


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