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わがままな氷上の貴公子
第5章  それぞれの闘い



 発表会当日。
 午前中から始まっているが、最初の方に滑るのは小学生など。
 オレは、昼過ぎにクラブへ入った。
 発表会ごときに、大したウオーミングアップも必要ない。一応怪我防止のために、前季のプログラムのレベルをダウンして滑るだけ。
「悠斗っ。遅いじゃん。小学生達の演技、可愛かったよー」
 控室兼ウオーミングアップに使う六階で、ジャージ姿の千絵に声をかけられる。
 発表会は長いから、午前と午後の部に分けて行う。今は午後の部が始まったくらいだろう。
「塔子と潤くんも、観に来てるよー。和子さんもー」
 母親は海外での仕事から抜けられなくて、今日は観に来ない。その代わり和子さんが録画した物を送ると言っていた。
 二週間近く、潤とも塔子とも会っていない。オレと千絵は殆ど個人練習で、会いに来られない状態。潤がウチへくることもなかった。
 圭太と付き合っているという嘘が、よほど効いたんだろう。
 和子さんには誤魔化しておいたが、今日会っても問題ない。まさか、男のオレに振られたとは言えないだろう。
 軽くジャンプのタイミングなどを確認してから、七階の会場へと向かった。
 客席は人で埋め尽くされ、オレの横断幕がいくつも出ている。
 通路で柔軟をしながら待っていると、主任コーチから声がかかり会場へ出た。
 その途端、黄色い歓声が上がる。
 たかが発表会といえ、演技はきちんと熟す。
 前の女子の演技が終わり、リンクへ降りた。
 一周してから中央で静止すると、歓声が止む。それは、フィギュアでの決まり事。
 前季のフリーの曲だったベートーヴェンの“月光”。
 それに合わせて滑り始める。
 まずは4回転トウループ。前季ではサルコウだったが、難易度はダウンしてある。
 振りをしながら勢いをつけ、3ループと3トウループのコンビネーション。
 成功する度に、拍手と歓声が起こる。
 4回転トウループの後は、コンビネーションスピン。
 発表会は、エキシビションのようなもの。
 今の全力を出す必要はなく、客を楽しませるのが目的。オレの姿と滑りを見られるだけでも、客は嬉しいはずだ。


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