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わがままな氷上の貴公子
第5章 それぞれの闘い

入って来たのは、千絵と塔子。
一階の風呂を使ったらしく、二人とも髪はまだ少し湿っている。
「お風呂、頂きました」
頭を下げて、微笑んだ塔子の表情が変わった。
「悠斗くん……」
「隠れて食べてたんじゃないっ。食べない振りしてー」
千絵が口を尖らせる。
二人の言っている意味が分からない。
「ご飯粒付いてるよ。唇の横っ」
千絵に指摘され、顔を押さえた。
手に付いたのは、確かにご飯粒。
「これは……」
潤が何か言おうとしたから、また蹴飛ばしてやった。こいつは何を言い出すか分からない。
さっき米類を食べたのは、潤だけのはず。
今のキスで付いたとしか考えられない……。
「悪い、かよ……」
そう言うしか無かった。
ティシュペーパーで米粒を拭いてから、ゴミ箱へ投げ入れる。
これでまた、オレのイメージが狂ったじゃないか!
“美少年フィギュアスケーター”が、部屋でこっそり米を食べていたなんて。千絵にそう思われたら、すぐクラブ中に広まりそうだ。
ノックの後、和子さんが入ってきた。
「失礼します」
客がいる時は、和子さんも返事を待たずに入ってくる。
「どうぞ。ごゆっくり」
全員分の紅茶と菓子を置いて行くと、オレの部屋でまたお茶会が始まってしまった。

