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わがままな氷上の貴公子
第5章  それぞれの闘い


 フィギュアだって、スポーツの一種。どんなスポーツでも、努力は欠かせない。それでも、いつかは“年齢”という越えられない壁が待っている。
 風呂から出てドライヤーで髪を乾かしていると、突然「悠ちゃんっ!」と聞こえた。
 ドライヤーを切って振り向くと、潤がすぐ後ろに立っている。
「勝手に入るなよっ!」
「ノックはしたよお」
 ドライヤーの音で聞こえなかった。
 潤は相変わらずニコニコ顔。
 本当に鶏頭だなっ!
 圭太と付き合ってるって言ったのを、もう忘れたのか? 嘘だけど……。
「出てけよ」
 ベッドに座って、睨みつけてやった。
「聞いたんだあ。圭太くんからあ」
「はあ?」
 こいつ、誰にでも話しかけるのか?
「悠ちゃんは憧れの先輩だけど、恋人じゃないって」
 もうバレたのか……。
 でもそんなことを男の圭太に訊けば、オレが怪しまれるだろ!?
 本当に、何にも考えてないんだな……。
「だから?」
「何で嘘ついたの?」
 無言で、枕元のフィギュア雑誌を開いた。
 もう、無視しかない。
「圭太くん、クラブ移るんだってね。せっかく仲良くなれたのに」
 じゃあ、圭太を口説けよ。圭太が男を受け入れるかは、知らないけどな。
「悠ちゃん。俺を試そうとしてる?」
「ああっ!?」
 ムカつく。
 焦らすなら、もっと好みのヤツにするよ。
 お前より、本当に圭太と付き合う方がマシだ!
 オレを弄びやがって。
 それに一番腹が立つ。
 オレはセフレかよ。塔子って本命がいながら、簡単に他のヤツとヤれるんだな。
 千絵から、お前が塔子の家に入り浸っているのは聞いてる。塔子の両親は共働きだとも聞いたから、好きなだけヤれるよな?
「ねえ、悠ちゃん」
「ああ?」
 顔を上げた瞬間、思い切りキスをされた。
 抱き着こうとしたから咄嗟に両足で蹴飛ばすと、さすがの潤も少し後ろへ下がった。
 オレの脚力を見たかっ!
「悠ちゃーん」
 それでも、ダメージはあまりないらしい。
 ノックの音がすると、潤が返事をしやがった。


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