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わがままな氷上の貴公子
第6章  本音


 小学生なら、面白いって人気が出るかもしれないけどな!
「通しでやってみるか」
「はい」
 鈴鹿に言われ、オレはリンクの中央へ向かった。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


「オレ、来週カナダ行くから」
「え? 旅行? いいなあ」
「旅行じゃないよっ!」
 変わらない、潤との夕食。
 一応予定を教えてやったのに、旅行だと!?
「大会ですよね。はい、潤くん」
 三杯目の茶碗を渡しながら、和子さんが言う。
「大会? ああ。フィギュアの試合かあ」
 だからっ! 大会だって言ってるだろ?
 グランプリシリーズの、オレの初戦はカナダ。その後もう一つ出て、結果が良ければファイナルへ進める。
 自信はあった。
 最近体が軽く感じるのは、体力がついて来たせいだろう。
 食事の量も、少し増やしている。
 お前ほどは食べないけどなっ!
 品数は同じでも、潤はオレの三倍の量。全部食べ切り、白米はおかわりまで。
 それは尊敬してやる……。
 紅茶を出した後片付けをすると、和子さんはいつものように帰ってしまう。
「悠ちゃん?」
「何だよ……」
「二人切りだねえ」
 お前が言うと、ムードも何もあったもんじゃない……。
「お前も帰れよ。今日は泊めないからな」
「ん。外泊届けは出してないから。でもさあ……」
 ニヤけているのに腹が立つ。
「だから何だよっ!」
 オレが来週はカナダだと言ったのは、予定を教えたかったわけじゃない。大事な大会前だから、襲うなという意味だったのに。
 本当に鈍感だなっ!
「お風呂入ったら帰るから」
「……絶対だな?」
「うん」
 部屋にさえ来なければ、問題はない。
「じゃあ、行こう?」
「はあ?」
 いきなり抱え上げられて足をバタつかせたが、全くの無意味。
「降ろせよっ!」
 そう言っても、潤はいそいそと浴室へ向かう。
 風呂だあ?
 勝手にお前だけ入れよっ!
 脱衣所で降ろされると、すぐにボタンを外される。
 ドアは潤のガタイに塞がれていて、逃げられない。
 こいつ。意外と考えていやがる……。
 裸にされて潤も服を脱ぐと、出会った時を思い出す。
 クラブのシャワールーム。
 あの時オレが一人じゃなければ、こんな風になっていなかったかもしれない。


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