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わがままな氷上の貴公子
第6章  本音


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 今日は、朝からクラブでの個人練習。
 冒頭の4回転サルコウについて、細かな練習を繰り返す。
 そこで転倒して動揺すれば、後の演技にも響きかねない。
 序盤に加点を多く取らなければ、後半は大技が少ない。基礎点が1.1倍になる最後三回のジャンプに、大技を入れる方が有利だとは分かっている。
 それでも、オレには持久力がない。
 ジャンプは前半に、コンビネーションを二つ含めた四つ。後半には、3回転を三つ。間とラストは柔軟さで魅せる演技構成。
 疲労から転倒するよりはいいと、安全策を取るしかない。
 本当は悔しかった。
 オレの実力と柔軟さに持久力が加われば、上を目指すのも簡単なはず。
 採点競技では、見た目も重視される。
 そんなことはないと言うのは、表向き。
 顔やスタイルの良い方が、印象だって良くなるだろう?
 贔屓(ひいき)する気はなくても、審査員だって人間。知らず知らずのうちに、見た目のいい選手に高得点を付けたくなる。
 ずんぐりした体型の選手と全く同じ演技をしたとすれば、オレの方が印象として多く加点が付く。体操競技なんかもそうだ。
 それを知っているからこそ、食事制限をしてまでスタイルを保つ。フィギュアスケーターとして、当たり前のこと。
「望月。以前より、ジャンプが高くなったな」
 コーチの鈴鹿に言われた。
 ダイエットの成果だろう。それに地下のジムに通って、下半身の強化もしていた。
「これなら狙えるぞ」
「はい」
 鈴鹿に言われると、自信もつく。
 自信も、フィギュアスケーターにとって大切な要素だ。
 たくさんの観客に、テレビ中継。国を背負う重圧。オレは平気だが、そんなプレッシャーに負けて落ちていくヤツも少なくない。
 そう言えば潤のヤツは、オレが学校へ出かけても寝ていた。
 オレのベッドで!
 和子さんには、オレが二階のゲストルームで寝たように偽装しておいた。
 わざとシーツにシワを付け、シャワーもそこで使って。
 きちんと朝食を摂って出たから、後は知らない。
 潤だって大学があるはずだが、それだってオレに関係ないだろ?
 あいつ、教育学部だって言ってたよな?
 教師になる気か?


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