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わがままな氷上の貴公子
第8章 本当の闘い

子供の頃から褒められ、大会に出る度に優勝していた。
“天才”と言われることもあったが、それは本人にとって誉め言葉じゃない。
言う相手に、悪気がないのは分かっている。
才能も必要かもしれない。でも蔭で努力していることを、全て分かってもらえない。
“天才”だとしても、その後に努力しなきゃ何も掴めないんだ……。
オレの場合知っているのは、コーチや和子さんくらい。
殆ど会えない家族にも、“才能”や“天才”だけで済まされているようで……。
「潤……」
「え?」
体を戻し、潤にしがみついた。
泣いたりはしないが、さっきの千絵のように。
「悠ちゃん……」
目を瞑って広い胸に顔を付けると、少し安心する。
静かに、潤の腕が背中に回った。
優しくしようとすれば、出来るじゃないか……。
「ヤらない、からな……」
「うん……」
暗闇の中、頭の上からの穏やかな声。
それにも、何故か安心出来た。
千絵のように、弱音を吐けない。
口にすれば、もっと楽になれるかもしれないのに……。
温もりに包まれながら、いつの間にか眠りに落ちていった。

