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〜 夏の華 ショートストーリー集〜
第10章 聖なる夜の手紙
風間一家に会うのは、約二年ぶりであった。
…中でも月城は夫妻の娘、瑠璃子の美しさに眼を見張った。
ようやく十二歳になったばかりであろう。
まだ幼い華奢な身体は手足が長く、頭が小さい。
日本人離れした美しいプロポーションであった。
風間はクォーターであるからその血が濃く出たのであろうか。

淡いブルーのリボンで束ねられた美しい髪は亜麻色に近い色で、日本であったら周囲から浮いてしまっただろうが、ここフランスではひたすらに賛美されるものだろう。

ミルクのように白い肌と人形のように整った目鼻立ちは母親と父親とどちらにも似ている。
繊細で嫋やかな雰囲気は、母親の百合子に似ているのだろう。
全くもって、ため息が漏れてしまうような美少女であった。

「瑠璃子様、大きくなられましたね。
もうすぐリセのお年ですか?」
温かなショコラを勧めながら尋ねる月城に、瑠璃子ははにかみながら頷いた。
「…はい。…今年…」
「…瑠璃子ちゃん、もう少し大きな声でお答えしなさい。
申し訳ありません。とても恥ずかしがり屋なのです」
隣に腰掛けた百合子が取りなすように微笑んだ。
「この子はパリ生まれですのに、本当に大人しくて引っ込み思案で、司とは大違いですの…。
司は人懐っこくて誰とでも…」
言いかけて、百合子は声を詰まらせ、唇にレースのハンカチを押し当てた。
「…申し訳ありません。…また、司を思い出してしまって…」
瑠璃子が心配そうに百合子の腕に縋った。
「…ママン…泣かないで…」
風間が百合子の白い手を握り締める。
「…百合子。司は大丈夫だ。
あの過酷な日本の戦時下を縣家の方々と乗り切り、今、日本で頑張っているのだから…」
「…ええ…そうですわね…。
最近は…司から手紙が来るようになって…。
司の様子が分かるようになったので…以前に比べたら、本当に安心はしているのですが…」
百合子は必死で涙を堪え、笑って見せた。
「…でも…もう、あの子に四年も会ってないのです…。
早くあの子に…会いたい…」
堪えきれずに泣き崩れる百合子を、風間が強く抱きしめた。
「泣かないで、百合子。
あと少しで民間人にも渡航許可が下りるようになる。
そうしたら皆で日本にゆこう。
それまでの辛抱だ」
「…忍さん…」

…抱き合う夫婦の美しい姿に月城と暁は視線を合わせ、そっとどちらからともなく手を握り締め合った。






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