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〜 夏の華 ショートストーリー集〜
第10章 聖なる夜の手紙
…風間百合子は忍の亡くなった兄の妻であった。
忍の兄は百合子が司を身籠っている最中に列車事故で亡くなった。
忍はこの美貌の兄嫁を昔から密かに恋い慕っていたのだ。
一方、孫は可愛いが、嫁を持て余していた風間の両親が百合子の実家の継母の言われるがままに百合子を実家に帰し、四国の海運王のもとに嫁がせようとの策略に乗っていた。
それを察知した忍は暁の力を借り、百合子と手を取り合い司と共にフランスへと駆け落ちをした。

司は新天地パリで両親の愛情をたっぷりと注がれすくすくと成長し、その数年後に瑠璃子が生まれた。
瑠璃子は夫妻にとって初めての…そして待望の娘だった。
二十歳になった司は日本の大学に留学するために帰国し、所縁のある縣家に滞在することになった。

…もっとも、ここからの詳しい話は夫妻の預かり知らぬ話だ。

月城の弟・泉は縣家の副執事をしていたが、その泉と司は恋仲になってしまったのだ。
戦況がきな臭くなる前にフランスに帰ることを再三勧めた忍の意向に、司が承知しなかったのはそんな理由があるのだ。

…縣様ご一家と疎開されていた司様がお一人東京に戻られたのは、恐らくは泉に会うためだろう…。

月城は、少し悩ましい想いに囚われる。

…もし、司様が泉と恋仲であることを風間様がお知りになったら…。
風間様はどうなさるのだろうか…。

…風間様は司様のことも大層可愛がっておられる。
お小さい頃からお父様代わりに愛情を持って接してこられた方だ…。
もし、事実が分かれば…。
泉のことを良くはお思いにはなられないだろう…。

…けれど、それは仕方のないことだ。

月城は腹を括っていた。

…泉と司様が愛し合い、幸せならば…それで良いのではないか…と。

時代は変わったのだ。
身分違いの恋が許される世の中になったのだ。

…新しい時代の新しい日本で、二人は生きてゆくのだ。
周りのものがとやかく言う問題ではないのだ。

月城はそう心に呟くと、新しいワインを風間に注いだ。

「司様のことはご心配はいりません。
…これからも泉が、命に代えてもお守りいたしますでしょう」
「…月城さん…」
風間はやや驚いたように眼を見張り…やがて、その端正な貌に柔らかな笑みを浮かべた。

「…ああ、そうだね。
君の弟がそばにいてくれるなら、心配はない。
…心から、感謝しているよ」





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