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〜 夏の華 ショートストーリー集〜
第11章 海賊と昼食を
「…残念ですが、今夜は店がありますので…」
…え?
店じゃなきゃ、行ってたのか?
暁は美しい眉を顰める。
リーズルの貌が曇る。
「ええ?そうなの?
じゃあ、おやすみはいつ?
いつならデートしてもらえる?」
…デ、デートだって⁈
今にも飛び出しそうな自分を抑えるので精一杯だ。
…断って…断ってよ、月城…。
祈りに似た念を塀の陰から送る。
…と、その執念にも似たオーラが伝わったのか…月城はこちらを見遣り、微かに微笑んだ。
…そうして…
「…マドモアゼル・リーズル。
申し訳ありませんが、個人的に貴女と出かけることはできません」
穏やかだがきっぱりとした声が響いた。
「どうして?私が嫌い?」
「いいえ。マドモアゼル。
私には恋人がおりますので、貴女とデートすることはできないのです」
リーズルが息を呑む気配がした。
そうして、不満そうな声が続いた。
「…知ってるわ。一緒にお店をやっているアキラ…でしょう?
あのすごく綺麗なひと。
…でも、男性じゃない。
結婚もできないじゃない。
私なら、結婚もできるし、貴方の子どもも産めるわ」
若く美しい娘らしい傲慢な言葉…。
…傲慢…だけれど、羨ましい…と、暁は思った。
堂々と結婚できる。子どもが産めると言い張れることがだ。
…まあ、そうだよな…。
ぐうの音も出ない事実だ…。
いつもこの言葉に、暁は心を乱されてしまうのだ。
…僕と一緒にならなかったら…月城はこの二つを手に入れられたのだ…。
眼を伏せる暁の耳に凛とした声が届いた。
「いいえ、マドモアゼル。
私たちは結婚しておりますよ。
…もちろん、教会で神父様に祝福された正式な結婚ではありませんが…。
二人だけで誓った結婚ですが、私は至極幸せです。
子どもはいりません。
私には暁様だけで充分なのです。
…何しろ、私の愛は暁様だけに捧げておりますから」
…月城の馬鹿…。
そんなこと…若い女の子に…わざわざ言わなくたって…。
見つめる地面がじわりとぼやける。
「…シン…」
月城の言葉に打ちのめされたようなリーズルの弱々しい声…。
「…申し訳ありません。
マドモアゼル・リーズル。
若くお美しい貴女に相応しい方をお見つけください。
それが私の心からの願いです」
丁寧で誠実な真摯な言葉に、リーズルの小さく詫びるような声が聞こえた。
「…ごめんなさい…シン…」
…え?
店じゃなきゃ、行ってたのか?
暁は美しい眉を顰める。
リーズルの貌が曇る。
「ええ?そうなの?
じゃあ、おやすみはいつ?
いつならデートしてもらえる?」
…デ、デートだって⁈
今にも飛び出しそうな自分を抑えるので精一杯だ。
…断って…断ってよ、月城…。
祈りに似た念を塀の陰から送る。
…と、その執念にも似たオーラが伝わったのか…月城はこちらを見遣り、微かに微笑んだ。
…そうして…
「…マドモアゼル・リーズル。
申し訳ありませんが、個人的に貴女と出かけることはできません」
穏やかだがきっぱりとした声が響いた。
「どうして?私が嫌い?」
「いいえ。マドモアゼル。
私には恋人がおりますので、貴女とデートすることはできないのです」
リーズルが息を呑む気配がした。
そうして、不満そうな声が続いた。
「…知ってるわ。一緒にお店をやっているアキラ…でしょう?
あのすごく綺麗なひと。
…でも、男性じゃない。
結婚もできないじゃない。
私なら、結婚もできるし、貴方の子どもも産めるわ」
若く美しい娘らしい傲慢な言葉…。
…傲慢…だけれど、羨ましい…と、暁は思った。
堂々と結婚できる。子どもが産めると言い張れることがだ。
…まあ、そうだよな…。
ぐうの音も出ない事実だ…。
いつもこの言葉に、暁は心を乱されてしまうのだ。
…僕と一緒にならなかったら…月城はこの二つを手に入れられたのだ…。
眼を伏せる暁の耳に凛とした声が届いた。
「いいえ、マドモアゼル。
私たちは結婚しておりますよ。
…もちろん、教会で神父様に祝福された正式な結婚ではありませんが…。
二人だけで誓った結婚ですが、私は至極幸せです。
子どもはいりません。
私には暁様だけで充分なのです。
…何しろ、私の愛は暁様だけに捧げておりますから」
…月城の馬鹿…。
そんなこと…若い女の子に…わざわざ言わなくたって…。
見つめる地面がじわりとぼやける。
「…シン…」
月城の言葉に打ちのめされたようなリーズルの弱々しい声…。
「…申し訳ありません。
マドモアゼル・リーズル。
若くお美しい貴女に相応しい方をお見つけください。
それが私の心からの願いです」
丁寧で誠実な真摯な言葉に、リーズルの小さく詫びるような声が聞こえた。
「…ごめんなさい…シン…」