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遠恋カレンダー
第8章 8月:花火
屋上に行くと結構な人数がそこにいて
始まる少し前に、青木と秋田さんがやっと上がってきた。
「もう!遅いよ!」
葵が軽く青木に怒って
それを慰めるように青木が葵の肩を抱く。
その時、一発目の花火が上がって、全員の視線が空に舞った。
気が付かないうちにそっと握られた手は
秋田さんで
困ったように秋田さんを見上げれば
視線を花火に向けたまま
「今だけ」
そうつぶやいた。
優しく優しく、そっと握られた手に花火よりも気持ちが集中して
振りほどけない、振りほどかない自分に困惑する。
それでも、スッとその手を抜けて
数歩前の青木に声をかけた。
「ねぇ。葵と写真撮ってよ」
逃げるように離した手を秋田さんは何も言わずに
「ほのかちゃん、サンダル?」
と笑った。
「そうなの。ほのかったら下駄を忘れちゃって」
「もう!入れたと思ったんだけどな」
「じゃぁ、写真は上半身な!」
そう笑う青木に
「花火も入れてよ!」
と葵が注文した。
ここにいる誰も、数秒前に私が秋田さんと手をつないでいたことを知らない。
始まる少し前に、青木と秋田さんがやっと上がってきた。
「もう!遅いよ!」
葵が軽く青木に怒って
それを慰めるように青木が葵の肩を抱く。
その時、一発目の花火が上がって、全員の視線が空に舞った。
気が付かないうちにそっと握られた手は
秋田さんで
困ったように秋田さんを見上げれば
視線を花火に向けたまま
「今だけ」
そうつぶやいた。
優しく優しく、そっと握られた手に花火よりも気持ちが集中して
振りほどけない、振りほどかない自分に困惑する。
それでも、スッとその手を抜けて
数歩前の青木に声をかけた。
「ねぇ。葵と写真撮ってよ」
逃げるように離した手を秋田さんは何も言わずに
「ほのかちゃん、サンダル?」
と笑った。
「そうなの。ほのかったら下駄を忘れちゃって」
「もう!入れたと思ったんだけどな」
「じゃぁ、写真は上半身な!」
そう笑う青木に
「花火も入れてよ!」
と葵が注文した。
ここにいる誰も、数秒前に私が秋田さんと手をつないでいたことを知らない。