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ひと月半の恋人
第3章 友達

「……私は、これからずっとゆうちゃんと生きてくんだよ?最後の思い出くらい、良いじゃない」
たかちゃんのことを忘れて、ゆうちゃんと幸せになるんだもん。
ゆうちゃんは穏やかな人だから、私だって、こんな引かれる様なやらしい自分を、見せたり出来る訳がない。きっと、もう一生、こんなに激しく抱かれる事なんか、無い。
「たかちゃん、ありがと。忘れるけど、忘れない」
「里緒……」
時計を見たら、もうすぐ十二時だった。
今日は、もうおしまい。このひと月半は、永遠に戻って来ない。
「……帰るね。」
「えっ?!」
「心配しないで。タクシー拾うから、大丈夫」
「でも」
散らばった服を、身に付ける。
流れて出て来る物を拭ったけど、まだ溢れてくる。ティッシュを何枚か取って、ショーツとの間に挟んだ。
「帰りたいの。お願い」
「……分かった。タクシー拾うまで一緒に居る」
「駄目」
玄関で破られたストッキングは、もう履けないな。
明日の朝燃えるゴミに出そうと思ってバッグに仕舞ってたら、どこかから、ピピッと小さな電子音が聞こえた。
……十二時だ。シンデレラの魔法も、解けちゃう時間。
私は、微笑んで立ち上がった。
「ひと月半ありがとう、たかちゃん。楽しかった。……鍵だけ、後で閉めて」
「……ああ」
「さよなら、隆志」
「……さよなら、里緒」
さよなら、ひと月半だけの恋人。
もう、全部忘れる。私達の間には、友情以外は、何も無い。また、友達に戻るんだ。
私は玄関の扉を閉めて、その部屋を永久に後にした。

