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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第3章  たもつ 


 それを物語っているのが、深夜のコンビニでの〝ドテモン〟なのだとしたら。その殻を取り去った彼女の心理は、深海の水圧のようなプレッシャーに晒されている状態と同じなのかもしれない。

 僕の浅はかな誘いに応じ、ここまでついてきてくれた。今だって青ざめた顔をしながらも、席を立とうとはしない。そんな姿に感動すら覚えていた。

「じゃあ、飲み物だけ注文するね。一杯だけ飲んだら、すぐに店を出よう」

 とても食事できる様子には思えなかった。僕たちは二人分のコーヒーを注文して、それを店の人が運んでくると、その間だけ手を離し去っていくとまた繋いだ。

 それでも時間と共に、少しだけ落ち着いたみたい。岬ちゃんはテーブルの上で重ねた手に、また僅かな力を込めた。そうして指先を俄かに絡めながら、一心に僕のことを見つめている。

 すがるようでもあり、なにかを訴えかけるようでもあり。彼女はその儚げな眼差しを、静かに揺らす。暫くそうしていると、岬ちゃんの頬に微かな赤みがさしてきた。

「ねえ、岬ちゃん」

「はい?」

「前に言ってたこと……もう一度、聞かせてほしいなって」

「前にって……わたしが?」

 僕は深く考えるでもなく、心の赴くままに言う。

「僕の笑顔が好き、そう言ってくれたのは――ホント?」

 こくり。岬ちゃんは、迷いもなく頷いてくれた。

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