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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第3章  たもつ 


「どうしよっか」

 暫くの間、すやすやと眠るベッドの中の岬ちゃんを見つめてから、ふと呟いていた。スマホをみると、もう時刻は夜の十時すぎ。電車で帰るなら、そろそろ部屋を出なければならない。

 泊まるという約束だから、帰る手段を気にかける必要はない。だけどレストランでのトラブルで疲弊して眠ってしまった彼女は、このまま朝まで起きそうにない。

 一人で起きてここにいる意味がないし、彼女が寝ている前では居心地の悪さを感じる。最も岬ちゃんが起きていたら、どうなっていたのか。今までのことを振り返り、頭を強く振った。

 今は妙な気持ちになっている場合ではないのに……。

 今日はじめて二人で外出できたことが、素直に嬉しかった。それまでの歪な関係が少しだけ、修正されたような気がした。たとえ、ほんの少しだけでも。

 でも結果としては、そのせいで無理をさせてしまったわけで……。

「やっぱり、一人にはしておけない」

 今は健やかな寝顔をみせてくれているけど、起きた時に一人だと心細く感じるかもしれない。レストランでの様子は、やはり尋常ではなかったから。

 ふとベッドから視線を上げて、改めて部屋の中を見渡す。家電や家具というものが極端に限られる部屋は、やはり異様だ。

 前に電動マッサージ器を取り出したトートバッグには、他になにが入っているのだろうと考えるが、開けて確かめるわけにもいかない。

 他に見るものもなく、立ち上がりキッチンの方へ。

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