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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第4章   岬? 


    ◇    ◇


「……」

 暫く待って落ち着きを取り戻した時、気がつけば自分が見慣れた部屋の中にいることに気づく。

 あれ、なにしてたんだっけ?

 もう日が明けようかというかというころ。わたしはごちゃまぜになった思考を、一から整理することに努める。

 感情を置き去りにするように機械的にそうしたことで、すっかり冷静になれたような気がした。さっきまで哀しかったのが嘘のように、気分はすっかりと楽になっていた。

 だから、その後でドアにノックの音が響いても、驚くことはなかった。

「岬ちゃん――帰ってる?」

 そう聴こえた声に反応して、反射的に部屋のドアを開け放った。朝陽が眩しかった。

 走ってきたのか、均くんは口から白い息を吐きながら、ドアの端からわたしの顔を覗き込んでいる。

「あのね……」

「なにか?」

 あまりにも、あっけらかんと聞き返したせいか、均くんは不思議そうに眉根を寄せた。

「岬ちゃん……?」

「みさき?」

 一瞬、その名で呼ばれたことにすら違和感を覚えて、そっと首を傾げていた。そんなわたしを不思議そうに見やり、均くんはその表情をさらに歪めている。

「どうかした……の?」

 とても意外そうなその声を聞くと――あ、そうか――と、わたしはようやく思い当たる。そして、彼にはある程度話すべきかもしれないと思うのだった。

「どうぞ」

「え?」

「部屋に入ってください」

「だけど……」

「話をしますから。わたしの過去のことを、少しだけですが」

「過去のこと……?」

 均くんは、まだなにか言いたそうにしたいたけれど。

「そうですよ。均くんが聞きたがってた話です。さあ、どうぞ」

 ドアを大きく開け再びそう促すと、訝し気にしながらも彼は部屋の中に入っていたのだった。

 わたしはこの時、なにかを覚悟したわけではなかった。

 ただ淡々と、均くんを部屋の中に通しただけ。

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